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LastUpdate 2016/04/28

富士山の傾斜角度

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登山とは、いわば傾斜のついた道を登ることに他なりません。その傾斜がどれくらいなのかを知っておくことも大切です。



数字で見る富士登山

このページでは、各登山道の傾斜度を調べた結果を報告します。しかし、ただ数値を見ただけでは、「へー、そうなんだ」ぐらいで役に立つ情報ではないと思えるかもしれません。これらの情報を生かすには、それぞれを見比べる必要があります。例えば、どの登山道は、他のルートと比べて傾斜が急であるとか、あるいは他の山の登山道の勾配を調べて、富士登山の事前練習の目安にするなどです。

地理院地図

地理院地図のサイトを使えば、地図上のルートをトレースすることで登山道の距離を測り、勾配を割り出すことも可能です。

但し、登山道は一度作られたらずっと変わらないように思われますが、実際には崖崩れなどによってルートが変えられることも少なくありません。舗装道路と違って登山道は実地の測量ではなく、空中写真を基にした航空測量で作られているようです*。つまり、厳密に正確な数値は求め得ないですし、頻繁に更新が行われているわけでもありません。それでも、多少の違いは登山に影響ありませんので、参考程度に考えておけばいいでしょう。

*(一部GPS(グローバル・ポジショニング・システム=衛星を利用した全地球測位網)や航空レーザを利用した測量も行われています。)

カシミール3D


改訂新版 カシミール3D入門編

より簡単に登山道の距離を測りたい方は、『カシミール3D』というソフトウェアがあるので試してみてはいかがでしょうか。ちなみに、私はこのソフトを使ったことが無いので評価や説明は出来ません。詳しくは以下のサイトでご確認ください。

Check Point!

登山道の距離と5合目の標高について

富士登山に関するサイトは色々ありますが、5合目登山口から山頂までの距離は、紹介するサイトによって長さが結構バラバラです。他の方が何を参考にしているのか分からないのですが、このサイトでは登山道に設置された看板、標識などを基にしています。

  • 吉田ルートは、富士スバルライン五合目、県営総合管理センター(旧スカイパレス富士)に向かって左側にある標識(現在は撤去されています)
  • 須走ルートは、山荘菊屋の左の看板
  • 御殿場ルートは、5合目の鳥居裏にある標識
  • 富士宮ルートは、山頂の登下山道入り口にある標識

また、5合目の標高は、登山口にある看板よりも、地理院地図サイトから読み取った数値を優先しています。例えば、富士宮口には標高2,400mを示す看板がありますが、実際にはその看板は5合目から少し登った所にあり、5合目の実際の標高は2,380mとなっています。

このように、看板や標識、資料ごとに数字が食い違っていることも珍しくありません。当サイトでは国土地理院の地形図を参考に、より実質に近いと思われる数値で表記するようにしています。

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ルートの比較

標高差だけが難易度の目安ではない

では、実際に各ルートを比べてみましょう。

下の表で、まず勾配から見比べてみてください。富士宮ルートだけが30%台になっており、四つのルートの中で飛び抜けて急なことが分かると思います。
次に、斜面を直登(ちょくとう)した場合の角度を比べてみてください。富士宮ルートが急なのは変わりませんが、吉田口六合目からの角度と比べても、ほとんど差がありませんね。

これが何を意味するかと言うと、吉田口六合目(2,390m)と富士宮口五合目(2,380m)の標高がほぼ同じでありながら、吉田ルートは富士宮ルートに比べて九十九折で登っていく場面が多いため、登山道の長さは吉田ルートの方が長くなっています。このことにより、山頂までの標高差は同じぐらいでも、距離の短い富士宮ルートの方が勾配はキツくなるのです。

つまり、5合目からのルート全体で見れば富士宮ルートが山頂までの標高差が小さいので一見楽なように思えますが、標高差の比率以上に登山道の距離も短くなり、その分勾配がキツくなるため、必ずしも登るのに楽なルートでは無いということです。但し、ルート全体としての傾向(平均値)と局所的な傾斜角度はまた別なので、他のルートでも岩場などで一部急傾斜が存在することに注意が必要です。

Check Point!

勾配と斜面傾斜角度の違い

勾配

勾配とは、主に道路や線路などの『人や車が通る道』の2点間の傾き具合を、100m進むごとに、どれだけ上昇するのかをパーセンテージ(%=割合)で示したものです。道路標識などで「5%」などと標記されているのが、それです。

計算式は、2地点間の[(標高差÷水平距離)×100=勾配(%)]となります。
例えば、800m進んで200m上がるような道であれば、[(200÷800)×100=25]、つまり勾配が25%だと分かります。これを登山に当てはめた場合は、登山道を登る際の、「道の」勾配ということです。

斜面傾斜角度

一方、斜面傾斜度は、『斜面の傾き』を角度(°)で表したものです。そこに道があるかどうかは関係なく、目的地までの最短距離を直線的に進むと仮定します。

登山では真っ直ぐ上に登るのを直登(ちょくとう)と言いますが、普通は直登するには角度が急過ぎたり、立ち木や崖などで登るのに困難な障害を避けるために斜面を横移動ぎみに登ってクネクネ折り返したりする道(九十九折=つづらおれ)がつけられています。
そのために、実際に登る登山道は斜面の傾斜度よりも緩くなるのが普通です。(実際の登山道の水平距離を元に計算すれば、登山道自体の平均傾斜角度も割り出せます)

傾斜角度は、2点間の水平距離と標高差から、直角三角形の角度を底辺の長さと高さから割り出す三角関数の計算式を使って割り出します。私は数学が苦手なので、『高精度計算サイト』を利用しました。また、水平距離と標高差は、『地理院地図(旧電子国土ポータル)』で調べました。

▲TOP

登山道の勾配と傾斜角度

ルート全体

登山道は、山小屋の前など平らな場所が多く有ります。そのために、平均値である以下の数値よりも実際は傾斜がキツイことに留意してください。

吉田ルート須走ルート御殿場ルート富士宮ルート
5合目~山頂
5合目標高2,305m1,960m1,440m2,380m
山頂までの累積標高差+1,446m1,746m2,266m1,332m
山頂までの距離6.3km7.7km10.5km4.3km
勾配23.6%23.3%22.1%32.6%
平均傾斜角度13.2°13.6°12.3°18.2°
6合目~山頂
6合目標高2,390m
山頂までの標高差1,316m
山頂までの距離5.2km
勾配26.2%
平均傾斜角度14.4°
※吉田ルートは、富士スバルライン五合目から吉田口六合目まで比較的なだらかな水平移動で獲得標高が少ないことから別途6合目からも計算。

8合目から

一般的に、山は裾野ではなだらかで、山頂に近づくほど傾斜が急になります。富士山では、8合目から特に傾斜がキツくなると言われています。

吉田・須走ルート御殿場ルート富士宮ルート
8合目から山頂*
終点標高3,710m3,700m3,710m
起点標高3,370m3,300m3,230m
標高差340m400m480m
距離1,120m1,265m1,272m
勾配31.8%33.3%40.7%
平均傾斜角度17.4°18.3°22.1°
※距離は地理院地図を使用し管理人が計測。但し、切れのいいところである等高線上を起点終点とした。*吉田・須走ルートは、本8合目から。御殿場ルートは、7合9勺から。
Check Point!

歩道橋の勾配

富士山の勾配だけではイメージが掴みにくいと思うので、歩道橋の勾配を調べてみました。

歩道橋(立体横断施設)の設計要領では、蹴上げが15cm、踏み幅が30cmを標準としていて、勾配が50%になるように設計されています。また、高さが3m以上に達する場合は1.2m以上の奥行きの踊り場を設けることとされているので、踊り場を含めた実質的な勾配は、41.7%となります。

歩道橋の方が勾配がキツイのはなぜか?

歩道橋の勾配と比較すると富士山の登山ルートが緩やかに思えるでしょうが、登山道には断続的に踊り場のように平坦な箇所があるので、実質的に登山道の勾配はもっと急なものとなります。また、階段とスロープ状である山の斜面では、登りやすさに違いもあります。

自転車用の斜路(スロープ)付きの階段が設けられた歩道橋では、勾配を25%以下にするように定められています。このように緩やかな傾斜であればスロープでも登れますが、傾斜が急になるほど階段のように水平で平らな踏み段があった方が登りやすくなります。ですから、階段で登れる勾配がスロープ状の登山道でも同じように登りやすいわけではないことに留意してください。

なお、一次資料は見つかりませんでしたが、JRの駅の階段も、蹴上げ16.5cm、踏み幅33cmと、勾配50%を基準に設計されているそうです。

剣ヶ峰馬の背

富士山山頂の最高地点である剣ヶ峰へ南側から登る斜面は『馬の背』と呼ばれています。

馬の背は、その名の通り峰の左右両側が切れ落ちて崖のようになっていますが、登山路のある斜面自体がとても急傾斜で、尚且つ固い岩盤の上に砂が載った、とても滑りやすい斜面です。距離は短いですが、登るときよりも下るときの方が転倒しやすいので特に気をつけてください。

剣ヶ峰馬の背
終点標高3,770m
起点標高3,730m
標高差40m
距離105m
勾配41.2%
平均傾斜角度22.2°
※距離・勾配・傾斜角は地理院地図を使用し管理人が計測、計算。但し、切れのいいところである等高線上を起点終点とした。

宝永山

宝永火口底から宝永山馬の背に登る斜面は、ザクザクとした砂の急傾斜で滑りやすく、難所のひとつとなっています。

宝永山
終点標高2,720m
起点標高2,440m
標高差280m
距離816m
勾配36.6%
平均傾斜角度20.4°
※距離・勾配・傾斜角は地理院地図を使用し管理人が計測、計算。但し、切れのいいところである等高線上を起点終点とした。

二ッ塚(双子山)

二ッ塚(双子山)は、御殿場口新五合目から行けるハイキングルートのピークですが、ほとんど砂の山というような滑りやすい急斜面です。特に上塚は標高差も大きく、一度登り始めたら休めるような状況にないので、一気に登りきらないといけない体力勝負の山です。

宝永山
下塚上塚
終点標高1,800m1,920m
起点標高1,780m1,780m
標高差20m140m
距離101m396m
勾配22.2%37.8%
平均傾斜角度11.3°20.4°
※距離・勾配・傾斜角は地理院地図を使用し管理人が計測、計算。但し、切れのいいところである等高線上を起点終点とした。
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斜面の傾斜角度

剣ヶ峰馬の背

岩場は基本的に直登するので、傾斜角30°以上の斜面を登ることも珍しくありません。また、積雪期に登る場合は、夏道が雪で埋まっているために直登します。

冬の富士山は、『氷の滑り台』と形容されるように、一度足を滑らせたら、岩に激突するまで止まりません。

吉田ルート須走ルート御殿場ルート富士宮ルート
5合目~山頂
山頂標高3,710m3,710m3,710m3,710m
5合目標高2,390m*1,960m1,440m2,380m
山頂までの標高差1,320m*1,750m2,270m1,330m
山頂までの水平距離2.55km*4.12km6.28km2.53km
平均傾斜角度27.2°*23.0°19.5°27.4°
9合目~山頂
9合目標高3,560m3,300m*3,400m
山頂までの標高差150m410m*312m
山頂までの水平距離0.25km0.8km*0.59km
平均傾斜角度30.6°27.9°*27.5°
※標高は地理院地図を参考にしており、10m未満は切り下げています。*吉田ルートは、富士スバルライン五合目から吉田口六合目まで比較的なだらかな水平移動で獲得標高が少ないことから6合目からの計算としています。*御殿場ルートは、7合9勺から山頂まで
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