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LastUpdate 2016/04/28

ストックの使い方

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ストックの基礎知識のページでは、富士登山にストックが必要かを考えました。このページでは富士山に限らず、あらゆる山での登山全般で考えてみたいと思います。



ストックを使わないことから覚えよう

ストック初心者の方にまず覚えていただきたいのは、「ストックを使わない」ことです。

ストックの使い方のページなのに、いきなり「使わない」と言われると驚くかも知れません。ですが、まずストックの使い方を覚える前に、どのような場面ではストックを使わない方がいいのかを知っておいていただきたいのです。

私が富士山などでストックを使っている人を見ていて思うのは、まだストックをうまく使えていない人ほど、『ストックを使うことに拘っている』ように見えることです。否、『ここではストックを使わない方がいい、という判断』がそもそも出来ていないと言った方がいいでしょう。
しかし、それもしょうがないのかも知れません。ガイドブックや登山関連のサイトでは、ストックのメリットは強調しても、ストックによるデメリットがきちんと説明されていることはまずないからです。

ストックを使わない方がいいのはどんなとき?

ストックを使わない方がいい場面は、いくつかのパターンに分けられます。

Check Point!

ストックを使わない判断

  • ストックを使うことにリスクがある場面
  • 自然や構造物を傷つける場面
  • ストックを使うことが効果的でない場面

まず、ストックを使うと危険な場合とはなんでしょうか。まず、急傾斜の岩場が挙げられます。

私がこのサイトを始めて最初の年(2011年)に、山小屋の取材をしていて言われたことで今でも印象に残っていることがあります。それは、須走ルートの瀬戸館で店番をしているおじさんに、私が富士登山のサイトを運営していることを伝えると、「ニット帽を持つこと」と「岩場でストックを使わないこと」を登山者への注意事項として書いておいて欲しいと言われたことです。

ニット帽は、特に御来光登山では防寒のために重要な装備ですが、ストックのことを言われたのは少し意外でした。しかし、それ以来他の登山者を注意して見ていると、ストックをうまく使えていない人、ストックを使わない方がいい所で使っている人がいかに多いかに気づきました。

このような注意を喚起する書き込みをすると、「他人がストックをどう使おうが、その人の勝手」という人もいます。ですが、果たしてそうでしょうか?

ストックは正しく使えば有効な道具ですが、間違った使い方をすると怪我を誘発することもあるのです。それは、ストックを使っている人だけではなく、全く無関係な赤の他人にも危害を及ぼすことがあります。

では、その危険とは具体的にどういうことでしょうか。

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ストックを使うと危険な場面

ストックの長さは、一般的に「登りでは短く、下りでは長く」と言われています。

前のページでも説明したように、この考え方は、肘を伸ばして体の前に大きくストックを突き出す使い方を前提にしています。では、それまで緩斜面を登ってきた登山者が急な岩場に出くわしたときに、一々ストックの長さを調節し直しているでしょうか?

いえ、私が知る限り、岩場の前で長さを調節し直している人を見たことはありません。では、岩場に合わせて短くすればそれで済む話でしょうか?

多くの人が、「捕まった宇宙人」状態

う~ん、岩場に合わせるといっても、どのくらい短くすればいいのか、みなさんはすぐに決められますか?
大体、岩場の段差の大きさは、一様ではありません。まさか、一歩ごとに長さを調節しないといけないのでしょうか?

現実的には、恐らくほとんどの人が、急傾斜であろうと岩場であろうと、それまで使っていた長さのままで突き進んでしまっているのではないでしょうか。実際に、捕まった宇宙人の写真のように腕を目一杯上に伸ばして使っている人を多く見かけます。

ストックが原因でバランスを崩したら本末転倒

それで一体何が問題か、左の図を見ていただくと分かるように、状況に合わない長さのストックをそれでも無理に使おうとすると、腕は高く上がり、肘は伸びきり、それでもストックが長すぎると、身体は後ろに押し戻されるように後傾します。このようにバランスが後ろに崩れた状態は、登山においてはとても危険なことなのです。

左の図では省略していますが、実際には登山者は重いザックを背負っており、それでなくても後ろに引っ張られる力が働いているわけです。そこに、ちょっとストックの扱いを間違えただけで、重心がさらに後ろに傾いてしまったとしたら・・・

仮にそれで岩場から転落したら、ことはあなただけの問題で済むとは限りません。後ろに人がいれば、その人をも巻き込んで怪我をさせるかも知れないのです。

どうですか?
もしあなたの前を登っている人が、このようなストックの使い方をしていたら、それでも「他人がストックをどう使おうが、その人の勝手」と思いますか?

Check Point!

岩場でストックを使わないのは絶対か?

しかし、こう危険だけを強調して書くと、岩場でストックを使うことが許されない行為であると思う人もいるかも知れません。ですが、ストックは道具であり、使う人によって熟練度に差があるのは当然のことです。

ある程度正しい使い方を出来ていて、その使い方に慣れている人であれば、かなりの急な岩場でも危険なくストックを使うことも出来ます。それは同時に、ストックを持っているいないに係わらず、岩場などどんな状況でも姿勢を崩すことなく登っていける技術を備えている必要があるということでもあります。

ようは、自分がどれだけ熟練しているか、どの程度の傾斜までストックを無理なく扱えるのか、それが自分で分かるようになるまでは、リスクは極力避けた方が無難ですよ、ということです。

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ストックを使わないときの持ち方

後ろに振り出さないで

さて、急な岩場でストックを使わないのであれば、ザックに仕舞えばいいのですが、危険な箇所の距離が短いなどの理由で「一々仕舞うまでもないかな」という状況もあります。
そのようなときは二本のストックを片手に束ねて持ち、もう片方の手をフリーにするわけですが、このときの持ち方にも注意が必要です。

ストックを伸ばした状態のままグリップの近くで持つと、体の後ろにストックが大きく飛び出すようになります。このまま、手ぶらで歩くときのように手を振ると、後ろの人に石突が突き刺さります。目にでも当たれば、失明させかねません。

使わないときは、縮めるか中ほどで持つ

こうならないために、ストックを後ろに振り出さないように気をつけることは当然ながら、写真のようにストックの中ほどで束ねて持つことで、うっかり後ろに振り出したとしても、その飛び出す長さを短くすることが出来ます。

子供にストックを持たせている親御さんは、特に注意してあげてください。子供が人に怪我を負わせてしまったら、楽しいはずの登山も台無しになってしまいますよね。

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その他のストックを使わない場面

ケースバイケース

その他にも、ストックを使わない方がいい場面があります。

例えば、木の根っこが地上に出て絡み合っているような場所では、無理にストックを使うことはありません。ましてや、根っこにストックを突き立てるなど言語道断です。

また、雨が降った後などの泥濘(ぬかるみ)となった道でも、無理にストックを使う必要はありません。水を吸って柔らかくなった土をストックで突くと、ゴムキャップをしていてもぐちゃぐちゃに荒らしてしまうことになりますし、第一、ストックがドロドロに汚れて、後始末が大変です。

先にも書いたように、ストックはあくまでも歩行の補助的な道具であり、必ずないといけないものではありませんし、わざわざ持って来たからといって常に使っていないともったいないというものでもないのです。

板敷きの山小屋の中

同様に、山小屋のウッドッデッキや、室内でも床が板敷きのところがあります。登山道の階段で土留めに使われている丸太、(富士山には無いですが)高山植物を守るために作られた木道などにおいても、石突が剥き出しのまま突くと木に穴を開け、そこから水が入って腐らせてしまいます。
ゴムキャップをつけるか、ストックを逆さまにして手持ちにするなど、構造物を傷つけないようにしましょう。板一枚といえども、山の上に運び上げるためには多大な労力が掛かっていることを忘れないでください。

腕が疲れたらザックに仕舞って休ませよう

もうひとつ、疲れた腕を休ませるために、あえてストックを使わない時間を設けることも考えてみましょう。腕がパンパンになって、登山後に筋肉痛になるような使い方では決してうまく扱えているとは言えませんが、一日中ストックを使いっぱなしでは、どんな使い方でも疲労するのは当然です。

ここぞ、というときのために腕の力を残しておくというのも、いわば登山のペース配分のひとつと言えるでしょう。これは、使わないときにはザックに収納しておけるストックならではのことで、常に持ち続けている必要がある金剛杖では不可能なことです。

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ストックの基本姿勢(フォーム)

ストックを使うにあたって、まず基本的な持ち方から考えてみましょう。

と言っても、難しいことはありません。要点は、力を無駄なく使うこと、人に迷惑をかけない、自然になるべく優しくということです。
では、この目的を達するには具体的にどのようなフォームがいいのでしょうか。

Check Point!

ストックの基本

  • 進行方向へ力の100%を向ける
  • コンパクトに振る
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ストックの向きを意識しよう

「八」の字「V」の字は、力が逃げる

歩き方と同じように、ストックも扱い方次第で無駄に疲労するなど効率的でない結果になることがあります。大事なことは、進行方向に真っ直ぐ力が向いているかどうかです。

登山と言うと体力や筋力でやるものと思われがちですが、どんなに鍛えても結局は有限に過ぎない力を、湯水の如く使っていたらすぐにガス欠になります。限られた体力をいかに無駄なく使うかが、登山では重要です。

具体的には、ストックを鉛直(重力の方向)に突くことです。登りであれば、進行方向は斜面の上になるはずですから、力の全てを真っ直ぐ上に、身体を上に持ち上げるためだけに使うということです。

これは聞けば至極当然のことですから、「改めて言われるまでもない」と思う方もあるかも知れません。
ですが、実際にストックを使っている人を見てください。図のようにハの字に持っている人のいかに多いことか。また、逆にVの字に持つように教えているサイトも見かけたことがあります。

いずれにしても、ストックを斜めにすれば、その分だけ力も斜め方向に逃げてしまうのは、物理(力学)の理論を持ち出すまでもありませんよね。

下りでは尚更真っ直ぐ突こう

これは登りだけでなく、下りでも同じです。下りでは重力に逆らって身体を支えるわけですが、鉛直に力を掛けていないと石突が横滑りして危険でさえあります。

もちろん、これは縦方向だけでなく、前後方向で考えたときも忘れてはいけません。試しにハッスルハッスルの動作(ガッツポーズを手前に引く)を思い浮かべてみましょう。腕を真っ直ぐ手前に引くのと、斜め方向に引くのと、どっちが効率的に感じますか?

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コンパクトに振る

(以下、工事中)

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