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LastUpdate 2016/09/04

八甲田山

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山に関する映画、『八甲田山』を紹介しています。

★★★★★山に興味が無い人にも見て欲しい名作
★★★★山が好きなら見逃せない
★★★山が好きなら損は無い
★★暇があったら見てもいいかも
う~ん・・・

八甲田山

八甲田山
製作1977年/日本
監督森谷司郎
主演高倉健/北大路欣也
評価★★★★

現実とは、かくも冷酷なものであるのか

新田次郎著『八甲田山死の彷徨』(新潮文庫)を原作に、真冬の青森県八甲田山系に雪中行軍演習に出た二つの部隊を待ち受ける、残酷なまでの自然との闘いを描いた大作。

実際に真冬の八甲田山でロケを行ったという映像は、現代のCGを多用した映画に飽き飽きした私には「これぞ本物」と喝采を送りたいぐらいです。ですが、物足りない面もないことはありません。Amazonのレビューを見ても、『横暴な上司に振り回される中間管理職』という組織論、リーダー論の構図で語られることが多いこの映画。確かに、登山においてはリーダーの判断、決断の大切さが繰り返し語られるように、その役割が非常に大きいことは間違いありません。

しかし、この映画では青森第五連隊が遭難する過程は語られても、「弘前第三十一連隊がなぜ無事に行程を歩き通せたのか」が、あまり語られていない印象です。もちろん、この映画は雪山登山の方法を指南することがが目的ではありませんから、装備や技術などを事細かに解説する必要はないでしょう。しかし、「遭難する部隊」と「しない部隊」の違いを「無茶な上司の命令」で片付けられてしまっては、本質を見誤ることになりそうです。

映画としては高倉健の演じる徳島大尉の人柄には魅力を感じますが、実際に隊を率いる上でどのような準備を行ったのか。例えば、両部隊の明暗を分けたものに「案内人」があります。徳島大尉はどのようにして、案内人の必要性を悟ったのか。また、事前演習によって、隊員たちはどのような知識と経験を獲得し、今回の行軍に生かしたのか。原作では、両部隊の「装備」の違いなどももっと強調されていたように思います。
私が思うに、結果として生死を分けたのは、「冬山の怖さ」をどれだけ実感として知っていたかにあると思うのです。映画では、青森第五連隊が事前演習の成功によって、却って冬山の怖さを体験することなく行軍に臨む様子が描かれますが、弘前第三十一連隊の事前演習についてはほとんど端折られています。

実はこのこと(失敗の原因ではなく成功の要因)こそが、悲劇としての面だけが強調されがちなこの事件の、本当に眼を向けられるべきところだと私は思うのです。しかし、登山に興味があるなしに係わらず、一度は見て欲しい映画であることは確かです。

もうひとつの八甲田山映画

また、史実を元にしながらも創作部分も含まれた小説を原作とするこの映画とは別に、より真実性を追究した下記のような作品もあります。興味のある方はどうぞ。『ドキュメンタリー八甲田山 ~世界最大の山岳遭難事故~』

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