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LastUpdate 2016/04/28

富士宮ルート登山レポート

登山日
天候晴れ
投稿者富士さんぽ管理人 37歳 男
人数単独
プラン日中日帰り
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富士さんぽ管理人による、水ヶ塚公園~富士宮口五合目~山頂の登山レポート。

朝日に輝く須山口登山道から登る

5:59水ヶ塚公園駐車場(標高1,450m)発晴れ17℃無風

夜が明け染めるころ、水ヶ塚公園に到着。数台の車は停まっているが、人の気配はない。天気はよく、富士山は頂上まで見えている。山小屋の灯りも見えるが、マイカー規制も終わり、登山者は直接5合目に向かうためにシーズン中とは別世界のように静かだ。
少し肌寒いがウィンドブレーカーを羽織り、準備もそこそこに登山口へ向かう。須山口の登山道入口は、水ヶ塚公園前の道路反対側、やや御殿場よりにある。昼間であれば、探さなくてもすぐに標識と案内図が見つかるだろう。

入口には、チェーンが道を横切るように張られているが、これは車の進入を止めるためなので、気にせずに脇を抜けて登山道に踏み込む。
道は明瞭で、傾斜もなく平坦に続いている。まだ朝日の差し込んでいない道だが、薄暗さはない。鳥のさえずりも聞こえてきて、気持ちのいい朝の散歩といった風情だ。

しばらく進むと、下り傾斜にかかる。登りが来ることを予想していたので些か拍子抜けしながらも、慌てずとも登りは必ずあると気持ちを引き締めなおす。
ここまでは軽快に進めるが、下った分はいずれ登り返すわけだから、あまりうれしいことではない。帰りは当然、ここが登りになるわけでもあるのだ。

さらに進むと、徐々に道が悪くなってきた。道は依然として充分に幅があり広く感じるが、洗掘(せんくつ=雨水が流れて土が掘れたところ)が意外と深く刻まれている。それは進めば進むほど顕著になり、次第にゴロゴロとした岩が目に付くようになる。しかし傾斜もさほどではなく、まだハイキングレベルで歩ける。
木の枝越しに朝日が差してきた。長い一日は、まだ始まったばかりなのだ。

6:48須山上り一合五勺

身体が温まって来たところでウィンドブレーカーを脱ぐ。上り一合五勺には、真新しい標識が立つ。ガイドロープなどは無いが、ポイントポイントにしっかりした道標が整備されているので、霧が出ていても迷うようなことはないだろう。とはいえ、地図は必須であることは書き添えておく。

30分ほど登ると、倒木が折り重なった場所に出る。ここは普段、風が強いのだろうか?富士山の麓では、このような場所はよく目にする。噴火後に形成されたまだ浅い土壌に対して、大きく育ちすぎた木々が自分を支えきれないのだろう。
この倒れた木は腐り、やがて新たな土壌となって、次の世代の苗床となるのだ。こうして徐々に土は深くなり、大木が根付くようになる。大いなる自然の営みを、倒木に感じるというのもまた面白い。

この場所は、木が倒れたことによって日が差し込んでいる。その恩恵を受けて、今まで見かけなかった花が、方々に咲いている。
写真の花は『黄苑(きおん)』という花で、ぱっと見は『秋の麒麟草(あきのきりんそう)』と似ているが、花の大きさが全然違う。同じ場所に咲いていることが多いが、大きい方がキオン、小さい方がアキノキリンソウだ。他にも『白嫁菜(しろよめな)』などを見かけた。

写真はうまくないので、被写体が自分の影になっているのはご容赦願いたい。

日なたに出ると、虫が飛び交っている。あまり纏わり付くような虫はいないので、まぁ我慢出来る。
ここまで展望は全く望めなかったが、後ろを振り返ると木の間に僅かな眺望があり、結構登ってきたことを実感する。

7:54二合五勺 御殿庭下

倒木帯を過ぎると、また森の中へ。この辺りは、地面から飛び出した岩に気をつければ、特に歩きにくいことはない。
太陽が高度を上げると共に、シャツが濡れるほど汗だくになって来た。

8:31三合目 御殿庭中

次第に地面の様相も変わり、砂礫の急斜面も時折現れる。ここで焦ると足が滑って体力を削られることになるので、意識してゆっくり、歩幅を小さく取る。
と、急に目の前に展望が開ける。バーンと目の前には富士山の山頂が。登山をやっていて楽しいのは、こういう場面転換の瞬間だ。「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」(『雪国』川端康成著)という心境であろうか。

進むにしたがって、右手には宝永山が顔を出す。空にはさかんに鳥が舞っている。あまりに速くて写真にも捉えられないが、白い腹に二股の尻尾からすると燕であろうか?

ここから先は、ずっとザレた急斜面が続く。空は晴れ、いい天気だ。

9:05山体観測装置(2,352m)

御殿庭上からの道と合流する地点に到着。ここで今日初めて他の登山者に出会う。ここまでは誰ともすれ違うことは無かったのである。
この場所には、『山体変動観測装置』というものが設置されている。おそらく、山体の膨張などから噴火の兆候などを監視しているのだろう。

~9:24食事休憩

ここで暫し食事休憩。日差しが強くなって来たので、日焼け止めを塗る。
右足ふくらはぎに少し張りを感じる。ここまで900mの標高差を3時間ほどで登って来たが、ザレ場(砂利の滑りやすい斜面)の登りが堪えたようだ。山頂まではまだ道半ば。少し不安がよぎるが、結果的にはその後問題となることは無かった。

ちなみに、宝永火口から下る場合には、御殿庭上から幕岩に抜ける道を通った方がいい。他の山ではあまり見られない、富士山独特の眺望の変化が楽しめる。逆に御殿庭中を通る道は、比較的ザレ場の登りが短くて済むので、登りに使うにはこちらの方が楽に感じられると思う。

9:45第一火口縁

宝永火口の上まで来ると、宝永山ハイキングと見られる人たちをチラホラ見かけるようになってきた。宝永山馬の背の斜面にも多くの人が見える。
足元は酷くザレていて、登りは中々大変だ。だが、富士山を何度も登っていると、このような斜面にも慣れ、コツがつかめて来たこともあり、さほど体力を消耗することなく登り切る事が出来た。

9:53六合目

6合目まで来ると、富士登山者が大勢行きかっている。時間的に登りはじめと、ご来光を見てお鉢巡りまで済ませて下ってきた人がすれ違うころだろう。

10:09富士宮口五合目着

5合目までは緩い下り坂が続く。多少の岩が露出しているところはあるが、慎重に歩けば危険はない。
ふと見ると、地面に靴底が二枚落ちている。よく、富士山にスニーカーで登ると靴底が剥がれるトラブルがあるというが、実際に目にするとちょっと驚く。その後も、剥がれた靴底を手に持って降りてくる若者を見かけたりした。

富士山恐るべし、と言うべきか、スニーカーで登るなんて山を舐め過ぎ、と言うべきか・・・

~10:34

5合目では、このサイトのための取材でアチコチを見て回る。駐車場は満車で人も多い。

ここまでの水分消費量は約900ml。歩数計で測った歩数は、8,382歩。なお、5合目に着いてすぐに歩数確認するのを忘れていたため、5合目到着後に歩き回った分も含まれていることから実質八千歩弱か。

ここまで、須山口登山道を登って来て、中々楽しかった。出だしは軽い散策気分で、徐々に道は悪くなるが、それもむしろ登山気分が盛り上げる舞台装置のようなもの。後半のザレた斜面は、歩き慣れない人にはキツイだろうが、ある程度ザレ場に対する歩行技術を持っていればさして困難ではない。総じて、休憩を含めて4時間以上の行程が短く感じられた。

森を出て富士山山頂が視界に入ると、否が応でも気分は盛り上がる。道は富士宮ルート、プリンスルートとお好みで選ぶことも出来、宝永山だけ登って行くのでもいい。5合目の駐車場問題に悩まされることもない。体力のある人にはオススメのコースである。

ただし、下りも須山口下山道をとるのであれば、日帰りは避けた方がいいだろう。5合目からバスで下りるのもいいし、途中の山小屋で一泊して御殿場口新五合目へ、二ッ塚を経由して帰るのもまた楽しい。この辺りはコース選択の柔軟性があるのもまた魅力である。

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岩がゴロゴロ富士宮

10:34富士宮口五合目発

さて、いよいよ山頂アタック開始である。が、富士宮ルートでは珍しいことに、ツアー登山が大勢引き連れて登っている。地元静岡のTV局も撮影登山を行っていて、賑やかなことだ。

10:49~11:106合目着 食事休憩

6合目に着くと、人が溢れている。幸いにしてツアーはそのまま登っていくようなので、ここで食事休憩を取ることにした。

11:106合目発

6合目を出ると、早速の岩場が始まる。場所によっては道が狭く、すれ違いもままならない。他の登山道に比べて、この道の狭さも富士宮ルートの特徴のひとつと言えるだろう。
また、比較的道幅の広いところでは、今度は地面がジャリジャリの細かい砂で滑りやすい。これも落ち着いて登らないと無駄に体力を消耗するだけである。写真のように大きな岩がゴロゴロしていて、落石にも注意が必要だと無言で訴えている。

ほどなくして、ツアーの団体が休んでいるところを追い越す。ツアー以外の登山者はさほど多くなく、下山者とのすれ違いの他はスムースに登ることが出来た。

11:52御来光山荘

快調に登り、御来光山荘へ。

12:47元祖七合目(山口山荘)

元祖七合目下の辺りから、岩場もより一層険しくなる。他の山の岩場との違いは、溶岩が冷えて固まった岩が写真のように不規則に凸凹していることだ。平らな部分がないので足の置き場所に迷うし、辛うじて探し当てたステップも小さいので爪先とふくらはぎに負担が掛かるのだ。

登山道から東側を見ると宝永山がずっと見えている。殺風景な岩ばかりで代わり映えしない風景の中で、宝永山だけが着実に高度を上げていることの目安となっている。

13:31池田館

池田館は既に今年の営業を終えていた。眼下には駿河湾が雲の切れ間に見えている。快晴であれば水平線まで見渡せるのだろうが、来年こそは雲ひとつない日に登ってみたい。

14:05~14:22万年雪山荘

万年雪山荘で取材していると、若者グループが吉田ルートへの降り方を従業員に尋ねていた。どうも、富士宮ルートを下っていく人たちがコロコロと転んでいることに不安を覚え、山頂からは別ルートを検討している様子。
しかし予定外で吉田ルートに降りるのは、ちょっと遠いのでは?と思い話をしてみると、案の定、富士宮口へは車で来ているという。パンフレット程度の地図しか持っていないために、位置関係がつかめていないのだろう。御殿場ルートから宝永山を経由した下山方法を教えてあげると感謝された。

このサイトでは地図を持つようにうるさく啓蒙しているが、このように予定外の計画変更もありえるのだ。地図とヘッドランプは、絶対に絶対に必要である。

14:46胸突山荘

胸突山荘は九合五勺に位置する。八合五勺が最後の山小屋となる吉田/須走ルートよりも山頂に近い。そのためか、傾斜が最もきつくなる最後の登りも短く感じ、吉田/須走ルートより楽といえるかも知れない。ようは気持ちの問題なのだが、この差が意外と大きいのも確か。

15:32山頂到着18℃弱風

山頂直下の岩場を越えると、鳥居が出迎えてくれる。空は晴れ、雲はどこまでも白い。

5合目から山頂まで4時間58分。食事休憩の時間を除くと4時間20分。
歩数計を確認すると、5合目から山頂まで11,166歩。飲料水約900mlを消費。途中6合目の食事でコップ一杯の水が出たので、実質1L以上の水分を飲んだことになる。

山頂にてパルスオキシメーターで血中酸素飽和度を測ると77%。平地で80%を切ると危険な値とされるが、富士山のような高度では珍しい数値ではない。私の場合は高度に順応しているのか、特に頭痛や体調の悪さは感じない。しかし、少ない酸素に順応しているとはいえ、80%を切るのは正常とは言えない。
これまでの経験では、ここで深呼吸すれば90%代まで回復するのだが、驚いたことに10分以上にわたって深呼吸をしても、腹式呼吸をしても、80%弱から数値が動かない。こんなことは初めてだ。最終的に、下山開始する前に再度測ると90%代に回復していたが、機械の故障とも思われず、体調判断の難しさを感じた。

とはいえ、この後剣ヶ峰まで登ってから下山するのだが、80%を切っているのに登山を継続したのは、賢明な判断だったとは言いかねるだろう。

17:20下山開始

駒ヶ岳、三島岳、剣ヶ峰と周るが、山頂付近は晴れており、広く見渡せるのは気持ちいい。
そろそろ日が傾き始めた。本来、下山開始するには遅過ぎる時間である。言い訳ばかりだが、あまりマネしないように。

18:20池田館

池田館の下で日没。ヘッドライトを装着。

日暮れに富士山を下っているといつも驚かされるのが、何も灯りを持たずに下っている人の多さだ。大部分は、想定以上に登山に時間がかかり、日没を迎えてしまったのだろう。

一方、ライトは持っているというが、真っ暗な中でも使わずに登っている人たちも見かける。
いかに月明かりがあるとはいえ、足元の岩の凹凸までは見えない。岩場で一度でも躓けば怪我をするリスクは高い。私にしてみれば自殺行為のように思えるのだが、彼らが何を考えているのか分からない。まさか、ライトを使わない登山を推奨しているガイドブックがあろうはずもなく、彼ら自身の判断で行っているのであろうが、今度詳しく聞いてみようか。説教臭い偏屈ジジイと思われるだろうが・・・

20:09富士宮口五合目着18℃

山頂から5合目まで、12,824歩。飲料水350mlを消費。

下山タイム、2時間49分。

驚いたのが、前回富士宮ルートで下山したときに4時間近く掛かったのに対して1時間以上も短縮出来ていること。これは、管理人の体力が飛躍的に向上した・・・わけではない。前回は山小屋の取材に時間を取ったこともあるし、登山道と下山道が共用なこともあり、登山者の多寡によってすれ違いなどに掛かる時間にも大きな差がある。前回は偶然にも同じ8月28日となるが、そのときは日曜日の比較的早い時間に対し、今回は火曜日の夕方で登山者も少なかったこともあるだろう。

それにしても、予想以上に下山が早く済んだとも感じている。上記だけの理由であれば、1時間以上の差にはならないように思う。
前回、富士宮ルートを下山に使ったときには、もっと岩場の印象が強かったように記憶していて、他のページでも注意を喚起していたが、やや表現を改める必要がありそうだ。というのも今回気づいたのは、ある程度コツを掴めば、初心者でも比較的安全かつ楽に下山可能ではないかということ。その下山方法は別に書くつもりだが、その歩行方法自体は前回にも使っていた。しかし今回新たに、『初心者でも』可能ということに気がついた。これは、前回のイメージより岩場が少なく、むしろ砂礫が多い印象を受けたことが大きい。岩場ばかりであれば転倒時に怪我を負うリスクが大きいが、砂礫であれば転倒の確率は多少高くても擦り傷程度で、大きな怪我のリスクは案外少ないからだ。もちろん、変な手のつき方をすれば骨折もありうるが。

ということで、自らの主張を一部撤回することになりそうだが、過ちは改めるにしかず。「危険です」ばかりでは芸がない。その危険をいかに回避するかという情報を提供するのも、このようなサイトの役割と言えるだろう。今回の登山で得たものは、登山前に思っていたよりも大きかった。登ってよかった。

20:42~20:56宝永第二火口縁 食事休憩

真っ暗な中で、食事。どこにも人の気配はない。風はないが肌寒い。

21:23御殿庭上

5合目から水ヶ塚公園への下山には、御殿庭上のルートを推奨する(平行している登山道の東側)。森林帯に入るまで滑りやすい砂礫の道が長く続くので、ここを登りに使うのは厳しいからだ。日中であれば、景色的にも西側のルートよりも個性的で楽しい。

23:24水ヶ塚公園

5合目から3時間1分で水ヶ塚公園へ帰着。今日も無事に下山出来ました。感謝感謝。

水ヶ塚-富士宮口五合目-山頂-剣ヶ峰を往復する行程で合計17時間25分(食事休憩他含む)。48,884歩。

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