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LastUpdate 2016/05/04

登山と体力の関係

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「富士山に登りたい!」
「何をすればいい?トレーニング?」

いえ、トレーニングも大事ですが、その前に登山と体力の関係を考えてみましょう。

登山は力で登るものではない

登山に必要なものというと、すぐに「体力」と「筋力」が思い浮かぶ人も多いかもしれません。ですが、体力や筋力が結果の総てを左右するかと、決してそうではありません。もちろん、体力も筋力も有れば有るに越したことはないですが、無いなら無いなりに補う方法もあり、やり方によっては体力の差を逆転させるほどの効果があります。その方法とは、以下の三つです。

Check Point!

体力不足を補う方法

  1. 正しいペース配分と休憩の取り方
  2. エネルギーの補給を欠かさない
  3. 効率的な歩行技術で無駄なエネルギー消費を抑える

「これで本当に体力の無い人でも、富士山に登頂出来るの?」

嘘ではありません。

富士山では、若い男性がヘバっている横を、老夫婦がニコニコ会話しながら追い越していく光景が普通に見られます。これが、登山は体力や筋力(だけ)でやるものではないという何よりの証拠です。

このように、体力の無い女性や子供さん、定年退職後に登山を始めた方でも、やり方次第で充分に富士山に登頂できるチャンスがあります。いえ、むしろ「体力には自信あるから、そういう話は興味ないな」という方にこそ、聞いてもらいたいのです。

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ペース配分の重要性

登山は、瞬発力ではなく持久力を求められるスポーツです。瞬発力を短時間で発するスポーツであれば、結果は「全力」をいかに出し切るかで決まり、そこでは「力(パワー)」が強い者が有利となるでしょう。しかし、持久力を求められる場合は、「全力」を出すとすぐにエネルギーが枯渇してしまいます。いわゆる、『バテ』と言われる状態です。長時間の運動である登山では、バテることは極力避けなければいけません。そこで重要になるのが「ペース配分」です。

また、同じ動作を行うのに、いかにエネルギー消費を抑えるかという「運動効率」も同様に重要となります。効率というのは、「限られた体力をいかに無駄なく使うか」ということです。

例えば、A地点からB地点まで移動するのに、100の力を消費する人、80で済む人、120も使って消耗しきってしまう人。その違いは、ときに「体力の差」以上に大きな影響を与えます。まずは、その視点から考えてみましょう。

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登頂するならカメになれ!

カメっ!

うさぎとかめ」の童話は誰もが一度は読んだり聞いたりしたことがあると思います。

着実に歩を進めるカメに対してウサギが負けてしまうのは驕りと油断によるものですが、登山に話を変えると、ウサギが負ける理由は「バテ」によるものとなるでしょう。

どんなに体力、筋力に優れた人でも、100%のスピードで長い距離を走りきることは出来ません。また、そのようなことをするとバテてしまい、一度バテると体力は容易に回復しないのです。

体力に優れるものは往々にして自己を過信し、体力を無駄遣いし勝ちです。成金が湯水のごとくお金を使うように。

猪突猛進は、知恵無き者

どんなに優れた体力の持ち主でも、その量は『有限』です。「無尽蔵のスタミナ」など絶対にありえないのです。限りある体力を無駄に消費すれば、すぐに底をつきます。知恵のある者は消費を抑え、長い距離を冷静に見据えて限られた体力を温存します。

体力を倍に増やすことは容易ではありませんが、無駄な消耗を無くすことで、体力の消費を半分に減らすのは決して難しいことではありません。それが『ペース配分』です。

ゴールまで走り続けられるスピード、それが正しいペース


マラソンのように
(image from 写真素材 足成)

これをマラソンに例えると、マラソンランナーは(多少の駆け引きはありますが)常に一定のスピードを保って走り続けますよね?

仮に、マラソンランナーがスタートから全速力で飛び出したとしたらどうなるでしょうか?
最初は他の選手を大きく引き離しますが、すぐにバテて遅れだし、追いつかれ、ついには抜き去られてしまうでしょう。それでも無理して走り続けると、足がつって走れなくなり、最後は棄権(リタイア)ということになります。

実際に、マラソンはプロ、アマチュアを問わず、「ゴールまで走り続けられるペースで走る」ことが大事です。そして言うまでも無く、距離が長くなればなるほど、あるいは体力がない人ほど、ペースを遅くする必要があります。登山も全く同じことです。「最後まで登り続けられる、自分なりのペースで歩く」ことが大切なのです。

最後の勝者

そして、ここからが大事なのですが、同じ体力であればバテない歩き方をした方がいいことは分かると思います。また、同じ歩き方であれば体力に優る方が有利でしょう。では、体力に優る人がバテた場合と、体力に劣る人がバテずに歩けた場合を比べたらどうでしょうか?答えは明白です。

体力は多少劣っても、バテずに歩いた方が最後は先に山頂に着いていることでしょう。これは、マラソンで例えたように、距離が長ければ長いほどより確実となり、その差も大きくなります。ですので、「登山では体力以上にペース配分が重要」なのです。

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バテると登山が苦痛になる

登山が楽しめないのは、ペースが速過ぎることが原因

悲しいことに、富士登山を経験して「二度と登山なんてしたくない」と思う人が少なくないそうです。これは、登山を苦行に感じる人がいかに多いかの裏返しであると言えます。では、なぜ登山を苦行に感じるのでしょうか。

「体力が無いから?」

いいえ、体力が有ろうと無かろうと、ペース配分が出来ずにバテてしまえば同じように大変苦しい思いを味わうことになるでしょう。逆に言えば、体力に不安がある人でもバテずに歩き通すことが出来れば、登山自体を楽しむことが出来ます。

余裕が、登山を楽しむ余地を生む

「本当かな?」と、疑う人も居るかもしれませんが、これは厳然たる事実です。バテなければ登っている間も余裕が出来ますから、景色を眺めて楽しむことが出来ます。同行者が居れば会話をする余裕も出来ますし、写真を撮ったり、花を見る余裕も出来ます。身体を動かすこと自体が楽しいと感じることも出来るでしょう。逆に、一度バテてしまうと、景色を見る余裕も、会話を楽しむことも出来なくなります。そのような登山が楽しいわけありませんよね。

そう、この『余裕』があるかどうかで、登山を楽しめるかどうかが大きく左右されるのです。

私がこのようなサイトを運営し、色々とアドバイスを書き連ねているのも、みなさんに登山を楽しんでいただきたいからです。そして、「富士登山は楽しかった。またいつか登りたい。他の山へも行きたい。」そう思っていただければ、これ以上の喜びはありません。

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自分に最適なペースの見つけ方

初心者に足りないのは、知識と経験

しかし、「ペース配分」と一言で言っても、登山初心者の方には難しいかも知れません。なぜなら、初心者には自らに適したペースを決めるだけの『知識』『経験』も無いからです。

ではどうするか?

当たり前のことですが、知識と経験を身につければいいのです。

知識は、先人に学ぶ

この場合、『知識』とは『情報』であり、先人の経験が参考になります。が、手っ取り早いのは登山地図から情報を得る方法です。私は、昭文社の『山と高原地図 富士山 御坂・愛鷹』をオススメします。この登山地図には「標準コースタイム」が記されているので、そのコースタイムに対して自分がどれくらいのペースで歩けたかで、現在の自分の実力が客観的な数字として確かめることが出来ます。

これは、「標準コースタイムこそが正しいペース」あるいは、「標準コースタイムで歩けるようにならなければいけない」ということではありません。あくまで自分のペースを掴むための参考資料ということですから、仮に標準コースタイムの倍の時間が掛かったら、倍の時間が掛かることを前提に登山計画を立てれば済むことです。つまり、「正しいペース」とは、人それぞれ違うものなのです。

以下、自分に最適なペースを見つけ出す具体的な方法を記述します。

Check Point!

練習登山で自分のペースを把握しよう

自分のペースを把握するのに、練習登山は欠かせません。それも、ただ漫然と歩けばいいというわけではありません。山を歩きながら、頭も働かせましょう。

  1. 区間ごとのコースタイムを測り、メモを取ること
  2. 標準コースタイムの何割り増しで歩けたかを計算する
  3. 次回の山行(さんこう)では、「コース全体を、区間タイムに対して一定のペース」で歩けるようにする
  4. 一回一回の山行ごとに、徐々にペースを上げていく(標準タイムに合わせる必要は無い)

※食事や大休止のような長い休憩はコースタイムに含めないこと。中休止・小休止は、それも体力回復のための登山における行程のひとつと捉え、コースタイムに含める。

このようにして練習登山の回を重ねると、徐々に自分のペースが標準コースタイムに比較してどれくらいなのかが分かって来ます。これが『経験』ということです。

登るのが速い人の方が偉い?そんな馬鹿な考えは捨ててください

勘違いして欲しくないのですが、「ペースは早ければ早い方が良い」ということではありません。

「私は〇〇山を何時間で登った」なんて自慢をする見栄っ張りや、登るのが遅い人を小ばかにするような態度をとる人が居ますが、早ければ偉いというわけではありません。ようは、自分のペースをより正確に掴むことが出来ればいいのです。

どんなに速く歩けてもペースにムラがある人は、まだまだ素人の域を出ていないと言えるでしょう。また、自分のペースを前提に踏まえた山行計画を立てられない人は、いつか遭難する危険性があると言えます。但し、一定のペースと言っても、歩きにくい岩場でも、歩きやすい平らな尾根道でも、どこでも同じペースで歩けということではありません。平らな尾根道など、安全に速く歩ける場所でしたら、バテない範囲でスピードを上げることも必要です。逆に、急傾斜の岩場で、平坦な場所と同じようなスピードで登っていては、体力の消耗を招くだけです。

大事なことは、状況に合わせたペースであり、同じ一続きの斜面でペースが極端に上がったり下がったりしないことです。

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休憩の取り方

休憩の取り方は人それぞれで、正直、私もまだ試行錯誤の段階です。ですので、ここでは一般的に言われている休憩の取り方を記します。みなさんも、実際の山行で色々試して、自分に合った方法を模索してみてください。

Check Point!

休憩の種類

休憩は、時間の長さによって大休止、中休止、小休止があり、目的によって意識して使い分けると時間を無駄にせずに済みます。

大休止
食事休憩や、山頂など眺望の良い場所でゆったり時間を過ごす場合。
中休止
1時間ごとなどに5~10分程度腰を下ろしたりして、計画的、且つ定期的にとる休憩。
小休止
座らずに立ったまま息を整え、水分を摂ったり、行動食を食べたり、地図で現在地や時間、ペースを確認するなど、1~2分程度で済ます一時的な休憩。

休憩の取り方も、自分なりに

休憩の取り方も人それぞれで、「中休止は取らずに歩き続けた方が疲れない」という人も居ます。

私は中休止を取るタイプでしたが、最近は中休止を取らないスタイルに変わって来ました。これが、体力がついて来たということなのか、正しいペースが掴めて来たからなのか、自分でも良く分かりません。
登山は奥が深いもので、年齢や体力、経験などによって変化するのも当然と言えます。私も私なりに、今後も試行錯誤を続けていくことでしょう。

休憩の間に身体を冷やさないように

なお、中休止、大休止の際は、身体を冷やさないように面倒でも上着を羽織りましょう。特に風の強いときは自分で思う以上に体温が奪われますから、脱ぎ着しやすく、風を通さないウインドブレーカーを取り出しやすい場所(雨蓋など)に入れておくと便利です。
体が冷えるということは、体温を維持するためにエネルギーを余分に使うということでもあります。これも体力の無駄な消費ですから、決して疎かには出来ません。

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