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LastUpdate 2016/08/25

登山の基礎知識

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富士山は、登山初心者が多く登る山です。ですが、初心者だからといって、「ルールを知らない」で済まされるわけではありません。また、初心者に限らず、マナーを守らない人も見かけます。
お互いに気持ちよく登山をするためにも、まず、自らが率先してルールやマナーを守る意識が必要です。



登山のルール&マナー

登山にも守るべきルールはある

登山は歩いて山に登り、下りるという極めて単純なスポーツ、レジャーですが、街中を歩くときに信号を守るのと同じで、登山にも守るべきルールが存在します。しかし、その多くは法律のように明確に定められたものではなく、登山の歴史の中で先人たちによる経験が共通の知識、知恵として継承されて来ました。

登山がまだ冒険として大いなる自然と未知への挑戦であった時代、登山者の多くは山岳会や学校の山岳部など同じ趣味を持つもの同士が集まり、力を合わせて困難な冒険を成し遂げる中で先輩から様々な知識を得ていました。それは生きて帰るためであり、円滑に登山を行うためであり、無用なトラブルを避けるためにも共通のルールが必要だったのです。

今では、登山道も整備され、コースタイムまで示された正確な地図が誰でも手に入るようになり、登山装備も進化して組織の力で登る必然性が薄れたことから、より少人数のグループで登られるようになりました。そのためにこれまで継承されて来た知恵も忘れ去られ、自己流の自分勝手な登山をする者がトラブルを起こすことが増えているようです。このページでは、当サイト管理人が知る限りの知識を皆様にも知っていただくために、一通り書き出してみたいと思います。

強制になるということではないことが望ましい

ただし、ルールを守ろうとするあまり、他人にまで義務として押し付けたり、少しマナーに外れた行為をしたからといって声を荒げて難詰するのは逆効果です。相手は登山のルールを知らなかっただけかも知れないですし、まずは穏やかな言葉で教えてあげるようにしてください。山でケンカをしても、誰も得をしないのですから。

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山での挨拶

登山って、案外孤独じゃないよね

挨拶は登山に限らず、人と人との関係の基本です。都会では人が多過ぎるために見知らぬ人にも挨拶する習慣は廃れた感がありますが、山では当たり前のこととして今でも行われています。

Check Point!

挨拶

  • すれ違うときは「こんにちは」、追い越すときは「お先に」と挨拶をしましょう。
  • 挨拶は登る側から。下りの人は、登る人から挨拶されるまで待ちましょう。

登り斜面では息が切れて、声が出せないこともあります。ですので、下り側の人は、登り側の人から挨拶されるのを待ち、挨拶がなければ軽く目礼程度で済ませるのが良いとされています。

登山では目的地が同じ人に、道中何度も出くわすというのは良くあるのですが、最初に挨拶をしておくと同好の趣味を持つものとしての親近感からか、会話に発展することも良くあります。そのようなコミュニケーションを面倒くさがる人もいますが(自慢話をされるなど)、ちょっとした会話が登山のアクセントになり、登山の思い出に実感を与えてくれたり、思わぬ交友関係が広がることもあります。

しかし、富士山や高尾山のような半ば観光地的な山では、行きかう人が多過ぎるためか挨拶をする人が少ないように思います。
そういう私も、富士山の五合目や山頂、山小屋の前など人が多いところでは、目が会った人に会釈をするぐらいで済ませてしまうことがありますが、登山道では自分から挨拶をするようにしています。

挨拶するのに理由が必要ですか?

この挨拶にも、もっともらしい理由が語られることもありますが、理由を考えるまでもなく挨拶をするのが普通だと思うのでクドクド説明は致しません。

中には「挨拶したのに無視された」なんて気分を害する人も居るそうですが、もしかしたら返事が出来ないほど呼吸が乱れていただけかも知れません。富士山は外国の方も多く登っていますから、日本語が分からないだけかも知れません。挨拶は相手があって成り立つものではありますが、必要以上に拘ることも無いと思います。

しかし、「挨拶を返してくれない人がいるから、自分から挨拶はしない」というのは、ちょっと悲しいことですよね。

Check Point!

世界の挨拶

富士山には色々な国からお客様が来ます。おもてなしの心で、挨拶しましょう。

うまく発音しないと伝わらないんじゃないかとか、難しく考える必要はありません。挨拶なんて気合ですよ、気合!
「ウー、ヤー、ター!」

英語
グッド モーニング(おはよう)
フランス語
ボン ジュール(おはよう/こんにちは)
ドイツ語
グーテン ターク(こんにちは)
イタリア語
ボン ジョルノ(おはよう/こんにちは)
中国語
ニー ハオ(こんにちは)
韓国語
アンニョン ハセヨ(おはよう)
日本語
おばんです(マイネーム イズ オバン)

「コンニチハ」で大丈夫

まぁ、実際にこのような外国語で挨拶することは、私もほとんど無いのです。なぜかと言うと、大概は、「こんにちは」と笑顔で挨拶すれば、それだけで充分伝わります。無理に英語などで話す必要は無いのです。「笑顔に国境は無い」ということでしょうね。

それに、見た目は日本人では無いのに日本語を話せる方も富士山では意外と多く出会います。日本で働いていたり、留学で来ていたりするのでしょうか?

挨拶は誰のため?

それでも、「なんで挨拶するの?」と尋ねられたら、私は「自分のため」と答えます。

なぜか?

挨拶って、気持ち良くないですか?

初めて会った見知らぬ人と笑顔で挨拶を交わす、たったそれだけで気分が良くなるのなら、まさに登山は絶好の機会ですから挨拶しないのは勿体無いですよね。そうは思いませんか?

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すれ違いは、登り優先

登山道は、基本的に幅が狭いものです。人が二人横に並んですれ違うことが出来ない場所も多々あります。そういうときにどちらが先に通るか迷うこともあるかも知れません。しかし、登山ではどちらが優先されるのか一応の決まりごとがあります。

Check Point!

そんなに急いでどこへ行く

  • 一人分の幅の登山道で対向者が来たときは、登る側を優先する。あるいは、その先の行程が長い方を先に通す。
  • 安全にすれ違える場所が近い方が譲る。
  • 団体のグループは、より少ない人数のグループを先に通す。
  • 先に通りたければ、「お先にいいですか?」と声を掛けよう。
  • 譲って貰えなかったからといって、登山道から外れたり、踏み跡がないところを無理に通ろうとしてはいけない。ましてや、無言で押しのけて通ろうとするのはトラブルの元。

全ての基本は、安全か否か

富士山では富士宮ルートを除き、登山道が登りと下りで分かれていますが、一部では登下山道が一緒になっているところもあります。特に富士宮口は道が狭く、急な岩場が続くのですれ違いには気を使います。こういうときのルールは、登る側が優先です。これは山頂に向かっているかどうかではなく、あくまでも基本は「斜面が登りか下りか」で判断するものだと思います。

理由はいくつかありますが、私が思うに登りよりも下りの方が転倒しやすかったり、落石を起こす危険が大きいこと。そして、そうなった場合に上に居る側が転倒や落石を起こすと下に居る人に被害が及ぶことなどが挙げられます。

しかし、このルールに捉われ過ぎるのも良くありません。登山道の状況に合わせて臨機応変に対応すべきです。登り坂で疲れている人は道を譲ってもいいですし、安全に行き違える場所に近い方が退避して待つという融通を利かせることもときに必要です。
このとき、譲る側の基本は山側に出来るだけ身を寄せることです。谷側で待つと、相手が躓いた拍子にぶつかられて転落する危険がありますし、路肩が崩れて足を踏み外す恐れもあります。狭い道であれば、相手が安全に通れるように出来るだけ道を広く開けてあげる心遣いをしましょう。

あなたがベテランだと自負しているのなら

しかし、富士山ではこのルールを知らない初心者も多く登っています。道を譲られなかったからと言って腹を立てたりせずに、「自分が譲ってあげたんだ」ぐらいの気持ちでいた方がお互いのためです。これに関して、面白い表現をしているブログがあったので引用します。

Opinion

夏の間、北アルプスで山岳パトロールをされている、豊後ピートさんのブログからの引用です。

山のマナー その2

2007年07月03日

<一部抜粋>

以前、「山では登りが優先だ!!!」と登山道の上でキレているおぢさんを見かけたことがありますが、登り優先なんて知らない人が多数派なのですから、イチイチ怒ってもしょうがないと思います。それよりも、登りだろうが下りだろうか、自ら先に待避して、すれ違う登山者を待つべきでしょう。そういう態度が「余裕ある大人」ってヤツです。

先に対向者を発見して待機するほうが、山のベテランだと思ってください。

こういう考え方、私は大好きです。

山を数多く登っていればそれでベテラン、というわけではありません。みなさんも、"本物の"山のベテランを目指しましょう。

グループの引率者は、対向者の接近に気を払いましょう

また、人数の多いグループとのすれ違いには時間が掛かりますから、グループの先頭を行くリーダーはきちんとグループを統率して、対向者や後ろから追いついてきた人に先に行ってもらうようにしましょう。

小さい子供を連れているなど、歩くのが早くない人が居るグループでも同様です。

顔を上げて前を見る、譲って欲しいときは声を出す

登山は競争ではないのですが、せっかちな人が前の登山者を追い抜こうとしてガイドロープを乗り越え、登山道の外を無理やり通って行くのを見かけます。これはとても危険で迷惑な行為です。落石を誘発したり、植生や土壌を荒らすことになります。待つのが嫌なら、「お先にいいですか?」と一声掛ければいいのです。それもせずに自分勝手な行動をするのは許されません。

先の例に倣えば、人を待つ余裕の無い人は、山のビギナーだと言うことですね。人に道を譲って多少遅れが出てもいいように、時間に融通の利く計画を立てられるようになって初めて一人前の登山者と言えるでしょう。

また、良く見かけるのが、足元ばかりに目が行って対向者の存在に気がつかない人です。
以下の囲みは、私が2013年に神奈川県の大山で見た実際の光景です。

Report

神奈川県丹沢山塊の大山での体験

下山中の若い女性が、岩場の上で登る人が途切れるのを待っていました。しかし、大山は人気の山で登山者が多く、中々登山者の行列が途切れません。そのうちの一人でも上を見上げて、待っている人が居ることに気がつき、道を譲れば良かったのですが、みんな登るのに必死で足元しか見ていません。

ついに、上で待っていた女性は痺れを切らして、とても降りれそうもない登山道脇の大きな段差に足を掛けました。その瞬間!ガラガラと音を立てて岩が崩れ落ち・・・・・・幸い、さほど大きな石ではありませんでしたが、これが大きな落石だったら下に居た人はどうなっていたでしょうか?

このケースでは、どちらの行動に問題があったのでしょうか?

第一義的に言えば、安全ではない場所から降りようとした女性でしょう。しかし、下山者の存在に気づかずに、続々と登っていった登山者側にも問題があります。

足元に注意がいってしまうのはよく分かりますが、であるからこそ、意識的に前方(上方)へ目を向けることが大切です。あなたの登るのを待ちきれなかった人が落とした岩が、あなたに向かってこないとも限らないのですから。

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迷惑をかけないために

あなたは責任を取れますか?

山で一個人が起こしうる大きなトラブルと言えば、真っ先に火事が挙げられます。

火事はちょっとした不注意で容易に発生し、取り返しのつかない事態を引き起こします。山中には火を消すための水も消火器もなく、消防車も入れません。何か事が起こってから対処しようとしても、火が燃え広がってからではすでに手遅れなのです。

吉田口五合目の佐藤小屋では、調理のための点火も山小屋の主人だけが行うという決まりがあるそうです。山で生活する人は、それだけ火の取り扱いに注意を払っているということですね。

attention!

富士山で禁止されていること、いないこと

富士山は、『富士箱根伊豆国立公園』の中にあり、特に標高2,300m以上(概ね5合目から上)は『特別保護地区』に指定されています。このエリアでは自然公園法により禁止事項が明確に定められています。

火入れと焚き火は許可が必要
火入れとは、いわゆる『野焼き』のことです。
焚き火は、この場合は『直火(じかび)』を意味し、地面で直接物を燃やす行為を指します。これらは富士山に限らず、どこの山でも規制や禁止、あるいは特別な許可を取るなど、焚き火を行う際は、特に注意を払う必要があることは言うまでもありません。
携帯コンロ(バーナー・ストーブ)の使用は可能
晴れた日中は日差しが暑いほどの富士山ですが、夜は急激に冷え込みます。特に御来光待ちでは暖かい飲み物が欲しくなります。そこで使われるのが携帯コンロ。鍋物などに使われるものとは違い、登山用にコンパクトに収納出来るように作られています。呼び方も色々あり、バーナーやストーブ(暖房の意味ではない)などとも呼ばれます。

一般的に、「富士山では携帯型コンロなどを使ってはいけない」と言われています。その根拠として、富士山は国立公園内であることがよく挙げられます。しかし、実際には富士山で個人が小規模な火器を扱うことを制限する明確な法律はありません。但し、制限がないからといって好き勝手に使っていいということではありません。

山小屋や燃えやすいもの(落ち葉、枯れ枝など)の近くで火を扱うのは避けましょう。調理中は水を手元に用意し、その場を離れてはいけません。特に、風の強い日には器具の転倒や飛び火にも注意が必要です。夜明け前の山頂など、混雑した場所での使用も控えるべきです。
ベンチやテーブルの上で携帯コンロを使うときも注意が必要です。特に、バーナーヘッドが分離型のアルコールストーブなどは、火器の熱が伝わらないように断熱性のバーナーシートを下に敷いて使うことが必須条件です。
タバコ
山に限らず、火事の主な原因はタバコの火の不始末によるものです。山小屋やトイレの中、燃えやすいものの周辺ではタバコを吸ってはいけません。タバコを吸うときも、風下に移動して、他の登山者に嫌な思いをさせないように気を使いましょう。吸殻は必ず火の消えたことを確認して、携帯灰皿に捨ててください。ポイ捨ては言語道断です。

補足

山小屋の前で携帯コンロなどを使用していると山小屋の従業員に注意されることがあるかも知れません。

山小屋の『周囲』での使用まで規制する権限が山小屋にあるかどうかはさておき、山小屋には管理責任があり、火災などを未然に防ぐという意味で登山者に注意を促すのは当然の権利であり、義務でもあります。法律的に規制されていないからといって、どこで使ってもいいということではないのです。

どうしても山小屋の周囲で使いたいのであれば、一言山小屋に許可を取るべきでしょう。それで断られたら、素直に安全な場所に移動して使うか、それが無理なら諦めるべきです。これは、マナー以前の『常識』であることを念のため申し添えておきます。

休む場所、ザックを置く場所も考えて

他にも登山道におけるマナーとして、特定の場所を長時間占有しないことにも気をつけてください。具体的には、標高や山の名称を示す山頂の『標柱』や、分かれ道などでの『道標』の前、見晴らしのいい『撮影スポット』などです。

ここで食事を始めたり、腰を落ち着けてしまうと、他の人が利用や撮影が出来ません。特に、道標を隠してしまうと迷惑なだけでなく、ときに道迷い遭難を誘発することも有り得ます。

テーブルやベンチを占領しない

テーブルやベンチにザックを置いて、荷物で占有するのも良くありません。他に人が居なければ構いませんが、他の登山者が来たら荷物をどけて、出来るだけ多くの人が使えるようにしましょう。ザックやストックも、横にすると場所をとります。縦に立て掛けて置くか、足元やベンチの下に横にして置くのがいいでしょう。

山は誰のものでもありませんが、他にも登山者がいることに思いを致しましょう。

夜に山小屋の前で大声で話さない

富士山では御来光を目指す人の翌朝(というか深夜)の出立が早いために、山小屋の消灯は8時から9時ごろになっています。そうでなくても静かな山の中は小さな物音でも響きます。夜間登山をする人は、山小屋近くで大声で会話したり騒いだり、笑い声をあげないように気をつけましょう(実際には、ヒソヒソ声でも耳について、眠りを妨げるようです。出来るだけ無駄な会話はしないようにしましょう)

ゴミを持ち帰るまでが登山

自分の出したゴミは、全て自分で持ち帰るのが登山です。その程度の体力も無いのなら、登山などするべきではありません。但し、山小屋の売店で買ったものから出たゴミに関しては、基本的に山小屋で引き取ってくれます。

例えば、買ってすぐに飲み干した空のペットボトルや、使い捨ての器、割り箸などです。出来れば割り箸は使わず、『マイ箸』を持参すると尚いいですね。えぇ、私も登山にマイ箸を持参してますよ。

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行動編

ルールやマナー以外にも、安全のために守るべきことがあります。

間違った行動というのは、ときにあなたや他の登山者の命に係わります。

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登山道の歩き方

登山道の外に出ないこと

先にも書きましたが、登山道は安全に通れる道ということで整備されています。そこをはずれると落石を誘発したり、転落の危険があります。もしも、あなたが登山道を外れて起こした落石で怪我人が出たら責任が取れますか?

また、富士山の5合目以上ではあまりないですが、綺麗な花が咲いているからと摘み取ったりするのもダメです。写真を撮ろうと接近して他の草花を踏みつけるのも、「私は足元が見えていません」と公言するようなもので、恥ずかしい行いです。

すれ違いは一歩横に踏み出して足を止める

登山道の中でも踏み跡がついていないところは極力歩かないようにしましょう。ぬかるみや水溜りで靴やズボンが汚れるからといって、道のついていない草の上を歩くと際限なく登山道が広がってしまいます。結果、さらに登山道が荒れて歩きにくくなるのです。

登山は街歩きとは違います。自然の中を歩けば、泥に汚れ、草の露に濡れるのは当然のことです。山の服装にファッション性を求めるのは構いませんが、自分が汚れるのを避けるために山を汚すようではいけません。汚れてもいい服装、心構えを持って登山に臨みましょう。

また、他の登山者とのすれ違いで踏み跡の無い草の上に足を入れるとき、そのまま歩いてすれ違うと道を荒らしてしまいます。ですので、すれ違いで人を避けて登山道の外に出るときは、真横に一歩分平行移動したら相手が通り過ぎるまでそのまま足を止め、相手が通り過ぎたらまた平行移動で登山道に戻って、それから前に進むようにしましょう。

ロープは頼りにならない

2011年に富士宮ルートを下山しているときに見かけたのですが、フラフラになって登山道を仕切るガイドチェーンに掴まって、というか縋り付いて降りている女性が居ました。

ガイドチェーンやロープは、あくまでも登山道の内と外を仕切るためのもので、手摺のように人が掴まることを想定して作られているわけではありません。ロープを掛ける支柱も深く埋め込まれているわけではなく、グラグラ揺れたり、簡単に抜けてしまうものです。そのようなものを頼りにしていてバランスを崩しても身体を支えることは出来ないのです。

何かに掴まらないと立っていられないぐらい疲れるのは、ペース配分を誤ったということです。そうなる前に撤退の判断をすることが大切です。

フラフラになったら山側を歩こう

結果としてそういう状況になってしまったのなら、尚のことガイドロープに頼ってはいけません。ロープが張られているのは、落ちたら危険な崖側だからです。

また、ふらつく足で岩を下に蹴り落とさないとも限りません。富士山の登山道は九十九折(つづらおれ)ですから、道の端から下に岩を落とすとそこには必ず登山者が居ます。人の上に岩を落としたらどうなるか、言うまでも無いですよね?

ですので、疲れて足元が覚束なくなったり、膝を痛めて踏ん張りが利かないようになったら、ロープの張ってある崖側ではなく、山側を歩くようにしましょう。しっかりした岩などがあれば、それに手をついて支えにしても構いません。さらに足元の不確かなザレ場(滑りやすい砂利の斜面)や腰の高さ以上の大きな段差では、四つんばいになって後ろ向きで降りるのが最も安全です。それを恥ずかしいなどと思ってはいけません。命と見栄とどちらが大切か、その判断を求められるのが登山というものなのです。

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落石にご用心

音には敏感に

落石を起こしてしまった、または見かけたときは、「ラ~クッ!」と大声で叫んで周囲に注意を喚起してください。意味は、落石、または英語のRock(石)ですが、ようは危険が相手に伝わればいいので、「落石~!」や、「逃げて~!」と叫んでも構いません。

落石は、斜面が急なところであれば、拳(こぶし)程度の大きさであっても大怪我になる恐れがあります。特に登っている人は足元に注意が集中しているので、落石に気付かず逃げ遅れる危険性もありますから、自分が叫ぶ場合だけでなく、「ラ~クッ!」の声を聞いたら落石だと瞬時に判断し対応出来るように、心構えも怠らないようにしましょう。

ヘリコプターに手を振らないで

なお、登山をしていると、ヘリコプターが近くまで飛んで来ることがあります。しかし、ヘリコプターに向かって手を振ってはいけません。もしかしたら、そのヘリコプターは遭難者を探しているのかも知れず、ヘリコプターに手を振るのは、「私が遭難者です」という合図になってしまいます。あなたが救助隊に間違って連れ去られるだけでなく、本当の遭難者から注意が逸らされることで、あなたの行為が人の命を左右してしまう可能性だってあるのです。

もちろん、あなたが本当に遭難したときは、遠慮せずに思いっきり手を振ってくれて構いません(笑)しかし、ただ手を振るだけではあまり目立たないので、タオル(白や赤色が良いとされる)の端を持って、頭の上でグルグル回すと見つけやすい合図になるようです。

耳を塞がない

携帯音楽プレーヤーの普及により、山でもヘッドホンをして音楽を聴いている人もいるようです。しかし、登山中に耳を塞いで外界の音が聞こえないのはとても危険なことです。先の落石の場合もそうですし、猪や熊が後ろに来ても、肩を叩かれるまで気付かないことでしょう。

山では、鳥のさえずりや木の葉が風で擦れる音、沢や滝に水が流れる音など、普段街中では聞くことの無い音が新鮮に聞こえてきます。富士山でも、風の吹きすぎる音や、ときには静寂に耳を澄ませてみるなど、音を身体で感じるのも登山の楽しみ方のひとつとしてお薦めです。

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パーティはバラバラにしない

子供から絶対に目を離さないで!

富士山の吉田ルートは渋滞するほど人が多く、ちょっと目を離すとすぐに同行者を見失ってしまいます。富士山のように人の多い山に限らず、山ではパーティ(登山グループのまとまりの単位)をバラバラにしないのが鉄則です。

実際に、山ではバラバラになったパーティによる遭難騒ぎや、死亡事故も少なからず起こっています。富士山では、子供の迷子も多いようです。子供が親から離れて先行してしまったり、酷いところでは親に置いてきぼりにされた子供が高山病になって、他の登山者や山小屋の人に助けられたなんて話もあるそうです。

Report

富士宮口八合目の山小屋、池田館の公式サイトからの引用です。

●皆さん、ちょっと考えてみて下さい ●

以前、こんなことがありました・・・

子どもが一人残され座っていました。
後から登ってくる登山者が見かねて山小屋へその子を入れてくれと頼みました。
子どもは高山病で体調が悪かったようです。両親はその子を残して頂上まで行ってしまい、何時間経っても下りて来ませんでした。
両親は子どもが山小屋に入っているとは知らずに、さらに下まで下りてしまったのです。

その後、山小屋関係者がその子どもを連れ下山したそうですが、おわかりのように頂上付近から下山するというのは、大変なことです。 街中で迷子になったのとは訳が違います。
グループの中の一人が高山病になってしまった・・・ こういう場合、一人を取り残して登山を続けるというのはどうでしょうか・・・
登山中のトラブルというのは、思いがけないところにあります。
こういったトラブルを避けるためにも、
グループ登山では必ずまとまって行動する事を心がけてください。

事前の準備がすべて

登山パーティが烏合の衆ではなくひとつのまとまったチームとして行動するには、共通した意識を持つことが大切です。いざという段になって慌てても既に手遅れということも多いので、起こり得るトラブルを想定して予め準備しておくことが重要なのです。

例えば、このページをあなたが見て知識を得たとしても、それをあなたしか知らなければ、パーティとして準備が出来ているとは言えません。だから、パーティのメンバーは一人残らず、子供も含めて知識を共有しておきましょう。

Check Point!

はぐれることを想定して備える

  • 地図は、コピーでもいいから必ず一人にひとつずつ持たせる
  • 登山口と泊まる山小屋に赤いサインペンで○印をつけておく
  • もしはぐれたら落ち合う場所を、行程ごとに複数箇所決めておく
  • 宿泊予定の山小屋の名称と電話番号、登ってきた登山口、既往症や血液型、確実につながる連絡先を書いた個人情報カードを持たせる(何かで意識を失うこともあり得るので大人も同様に持つこと)
  • 初心者や子供は隊列の真ん中に挟み、経験者や大人が前後を固めて目を配る
  • 体調不良者が出たときにどうするかを予め決めておく
  • パーティはバラバラになってはいけないという意識を登山開始前に共有←これが大事

元気な子供が親を残して先行してしまった場合、20~30m離れてしまってから「離れたらダメだよ~」と呼びかけても、聞こえるとは限りません。現地で対処出来ると思わずに、登山を始める前から「10m以上離れたらダメ」と決め事として教えておくことが大切です。また、「みんなとはぐれたら、地図やカードを見るんだよ」と教えておけば、本人が行き先や落ち合う場所を忘れても、どこに行けばいいのかわからずにパニックになる、という事態は防げるでしょう。

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