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LastUpdate 2016/04/28

富士山の気象条件

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山の天気が変りやすいのは登山の常識です。特に富士山では天候が登頂の成否を分けるだけでなく、ときには命に関わるものです。正しい知識を身につけ、想定しうるあらゆる状況に対処できる装備を揃えて登りましょう。


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もうひとつの危険、落雷


雷怖い
(image from 写真素材 足成)

富士山では、低温、強風、雨と共に、雷の存在も忘れてはいけません。

富士山のように森林限界を越えた山の山頂はもちろん、ひらけた尾根や斜面では山小屋以外に雷から身を隠す場所も無く、落雷は命取りになります。実際に、富士山でも落雷による事故が何度も起きています。近年では、2008年8月9日に富士宮ルートで1名が落雷で亡くなっています。

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雷から身を守るには

登山において、落雷から身を守る方法は2つしかありません。

ひとつは山小屋の中に避難すること、もうひとつは雷の発生する可能性のあるときには登らないことです。

attention!

君子危うきに近寄らず

・山小屋の中に避難
落雷に遭遇したときに最も安全なのは、建物に避難することです。しかし、現実的には必ずしもうまく逃げ込めるとは限りません。
雷雲は発生から発雷までわずか15分程度の短い時間で成長します。15分といっても、それは雷雲の発生にすぐに気付いたらという前提ですから、実際には雷雲を認知してから山小屋に逃げ込むだけの十分な時間があるとは言えないでしょう。
特に富士山は登山道が渋滞するほどの多くの登山者が登っています。タイミングよく山小屋に逃げ込む時間的余裕があるかどうかは運任せということでは、雷から身を守るのに十分な方法とは言えません。

また、運良く山小屋の近くに居たとしても、そのようなときは他の登山者も山小屋に殺到することは容易に想像できます。山小屋にその全ての人を収容できるだけのキャパシティはありませんから、入れない人は雷に対して無防備のまま外に立ち尽くすことになるでしょう。

運よく山小屋の中に避難できたとしてもそれだけでは安全とは言えません。壁や柱、屋外に繋がった電話線やTVのアンテナ線などを電流が伝わって来るので、1m以上離れている必要があります。
・車の中に留まる
金属製の車の中は最も安全です(屋根が布などで作られたオープンカーを除く)。5合目の駐車場などで雷に遭遇した場合には、あえて外に出ずに車の中に留まり、金属部分に触れないように、ハンドルからも手を離して雷の過ぎ去るのを待ちましょう。
山道を走行中は、安全な場所に車を停めて雷をやり過ごしましょう。車を停められる場所が無ければ、落雷のショックで気を失ったり運転を誤る恐れがあるので、追突されないように気をつけながら徐行運転しましょう。
・雷の発生する可能性のあるときには登らない
もっとも現実的で効果的な唯一の方法です。雷雲は局所的かつ短時間で発生するので、直前でなければ予測は出来ません。ただし、雷の発生しやすい気象条件であるかどうかは今でもちゃんと予報されています。
これは主に、『天気概況(てんきがいきょう:天気の今後の推移などを簡潔に文章で表したもの)』として、気象庁のサイトやTVの天気予報でも「大気の状態が不安定」「急変する恐れ」「雷を伴い」という言葉で注意を促しています。富士山に限らず山に登る際は特にこれらの言葉に注意してください。特に、「雷注意報」が出ているときは絶対に登るべきではありません。
・行動時間に気をつける
雷の発生しやすい時間帯というのもあります。
積乱雲を成長させる上昇気流は地面が熱せられることで発生するため、日差しの強い昼から午後に、積乱雲がより発達する傾向にあります。これによる激しい雨が、所謂「夕立」です。このため、夏の登山では早朝から行動を開始し、午後は早いうちに山小屋に入るなり下山にかかれるような計画を立てることが常識とされています(但し、富士山では早めのチェックインを受けていない山小屋もあるので、事前の確認が必要です)。また、上空に寒気が流れ込んだ場合は時間に関係なく雷が発生するので注意が必要です。

落雷の前兆として風の温度の急な変化もあげられます。上昇気流によって積乱雲が発達している間は比較的暖かい空気が昇ってきますが、落雷直前には下降気流が上昇気流を上回って強くなるので、上空の冷たい風が強く吹き降ろしてきます。このように、急に冷たい風が吹き出したら天候の変化に注意が必要です。
また、霰(あられ)や雹(ひょう)が降ると激しい落雷に見舞われる可能性が非常に高いです。このような前兆現象を見逃さずに捕らえることも、雷から身を守る上では大切なことです。

雷というと、日本では「落雷に遭って運が悪い」などと天災としての面が強調されますが、実際には正しい知識と判断、行動によって避けられるはずの人災であると言えます。
近年の富士登山ブームにより、登山知識、特に身を守る知識を持たずに観光気分で登る人が多くいます。私が恐れるのは、いつか大きな事故が起こるのではないかということです。事故が起これば後追いで何かしらの規制がされるようになるのでしょうが、起こってからでは遅いのです。正しい知識があれば避けられる事故は、やはり未然に防ぐべきだと私は思います。

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それでも雷に遭遇したら

正しく恐れることは、決して恥ずかしいことじゃない

落雷のメカニズムは未だに未解明の部分もあるようですが、近年の研究により一昔前の常識は大きく覆されています。これから書くことは、生存の可能性をあげる方法でしかなく、身を守る方法ではありません。屋外で雷から身を守ることは、事実上不可能です。雷に遭遇してからどう対処すべきかを考えるよりも、雷に遭遇しないためにはどうするかを考えることが大切です。

これだけ書いても意に介しないで登ってしまう人はいるでしょう。また、「登山をする以上はなんらかのリスクを伴うものだ」、「雷を恐れていては登山は出来ない」などという人も居るかもしれません。実際にはリスク要素の多い登山だからこそ、少しでもリスクを減らして安全に登山できるように考えるべきなのです。くどいようですが、繰り返します。以下の知識を身につけたからといって、落雷の恐れのあるときでも安全に登れるなどと考えるのは本末転倒です。くれぐれも判断を誤らないように、正しい知識を身につけて登山してください。

雷の基礎知識と対策


避雷針
(image from 写真素材 足成)

※注意:以下の内容に基づいて行動して事故に遭っても当方は一切責任を負えません。なぜなら、雷の可能性がある中を登山する行為自体に過失があるからです。

・雷は突起物の先端に落ちる
雷は、一般的に高いものに落ちると認識されていますが、これは正確ではありません。雷は、雷が地上に向けて伸ばした腕に最も近い突起物(先の尖ったもの)や建物の角に落ちる可能性が最も高いのです。
また、雷が金属に落ちるという俗説も迷信です。実際には金属を身に着けているかどうかに関わりなく、傘やストックの他、金剛杖や身体から上に飛び出たザックにも落ちるので、身を屈めるだけでなく、ザックは肩から外して腹側に抱えこむ方がいいでしょう。
Check Point!

雷がジグザグに落ちて来るわけ

稲妻は、発雷すると「ステップリーダ」と呼ばれる先駆放電が10万分の5秒という極めて短い時間に20~50mごとに停止しながら徐々に伸びていきます。それに対応して、地面からは「ストリーマ」と呼ばれる迎えの放電が発生します。
ステップリーダが最後の20~200mでストリーマと結びつき、大量の電荷が流入する主雷撃となります。この最後のステップで最も近くにある物体の先端に落雷し、この長さを雷撃距離と呼びます。

・直撃しなくても命を落とすケース
かつては、高い木の下に避難すると安全と言われていました。しかし、雷に関する研究が進んだ今では木の下に避難するのはむしろ危険であることが分かって来ました。実際に、木の下で雨宿りをしていて落雷に遭い、死亡したケースが多数報告されています。

樹木に落ちた雷の電流は、木の表面を伝って地面に流れ拡散します。人が木に触れていたり近くにいると、人体に電流が飛び移ってくることがあります。これを『側撃雷(そくげきらい)』と言い、人を死に至らしめる威力を持っています。

一方で、高い木を避雷針として考えた場合、ある条件の範囲には雷が落ちる可能性が比較的小さく、側撃雷も受けにくい保護範囲があることが分かっています。

・雨宿りは危険な場合もある
雷には豪雨が付き物ですから山小屋に入れないとなると軒先で雨宿りぐらいはしたいと考えるでしょう。ですが、山小屋などの建物に落雷すると「表皮効果」により電流は主に壁の表面を流れますが、木製の壁よりも人体の方が導電性が高いために外壁から雨宿りしている人へ電流が飛び移って来ることがあります。
建物の中に入れない場合は、むしろ建物から少し(3mほど)離れてしゃがんでいた方が安全な場合もあると覚えておいてください。(建物の高さが5m以上で保護範囲があるかどうかなど、ケースバイケースなので絶対ではありません)
・建物の中でも、安全な場所と危険な場所がある
建物に落ちた雷は、壁の表面を伝って地面に流れます。壁や柱に手をついたり、もたれかかっていると危険です。壁や柱、屋外に繋がる有線電話、TVや無線機からは1m以上離れましょう。また、衝撃気圧波でガラスが割れて飛散することもあるので、窓ガラスや鏡の近くも避けられない場合は、被害が少なくなるように長袖の上着を着てガラス製の物に背を向けていましょう。
なお、テントの中も安全ではありません。富士山周辺では限られた場所でしかテントは張れませんが、もし幕営中に落雷の危険を感じたら、速やかに安全な建物(山小屋)の中に避難しましょう。

・高い木や鉄塔の下の保護範囲

富士山の5合目以上では、吉田ルートと須走ルート以外は森林限界を超えているために高い木はありません。ですが、覚えておいて損はないので触れておきます。

保護範囲とは、雷がそこに居る人よりも高い木など別のものに落ちる可能性が高い場所のことです。5~30mの高さの木や鉄塔などの構造物を下から見上げて45°の範囲内、かつその木の幹や枝葉、壁や柱などから3m以上離れた限られた範囲です。30m以上の木や構造物の場合は、仰角45°の範囲は適用されず、3m以上離れ、かつ30m以内の距離が保護範囲となります。

この保護範囲内で、手を地面に着かず、目と耳を塞いで両足を揃えてしゃがみこむことが、落雷の被害に遭う可能性を少しでも減らすことになります(足が開いていると歩幅電圧と言って、左右の足の電位差によって被害を受けることがあり、体育座りも同様の危険があります)。この際は、ザックを背負ったままだと背中から上に飛び出してしまうので、降ろしておいた方がいいでしょう。
落雷の放電路は一瞬で30,000℃となります。これは太陽の表面温度6,000℃よりも高く、瞬間的に空気を膨張させます。この膨張により周囲に衝撃気圧波が広がるので、耳を塞いで鼓膜が破れるなどの傷害に備える必要があります。

このような、高い物による保護範囲のない場所では、尾根や岩の上など斜面から出っ張ったところは避け、窪地など出来るだけ低い場所でしゃがみこむようにしましょう。
しかし、山の雷は上からだけとは限りません。雷雲の中に入ってしまえば、真横から雷撃を受けることもあり、保護範囲などというものは意味を持ちません。こうなると、「運が悪ければ落雷」ではなく、「運が良くないと助からない」状況です。ですから、「山の雷」は恐ろしいのです。

・屋外では間隔を空ける
多人数で登っている場合、屋外で保護範囲に避難しているときなどお互いに出来るだけ離れることが重要です。まとまっていると、一人が直撃を受けたときに同時に複数が被害を受ける可能性があります。
パーティーの全員が倒れてしまっては、誰も救命活動や救急連絡が出来ません。保護範囲から外れない前提で、少なくとも5m以上離れた方が良いでしょう
・ラジオで雷の発生を知ることが出来る?
アナログAMラジオでは、雷によってノイズが入るために雷の発生を知ることが出来るとされてきました。しかし、最近のラジオは雷などによるノイズが入りにくいように対策が施されているので完全ではありません。また、すでにノイズが聞こえているような状況では避難するには手遅れということも有り得るので過信は禁物です。雷探知機などでも同様です。
なお、デジタルラジオやFMラジオではノイズが入りにくいため、雷を有効に探知出来ないとされています。
・登山中に傘を使うことの是非
まれに、登山に便利な道具として折り畳み傘をあげているサイトを見かけます。登山口へのアクセス(アプローチ)までなら危険性は少ないと思われますが、登山中に使うには落雷の恐れが全くないとは言えません。安全な状況で使うのならいいのではないかという意見もありますが、そもそも傘を使うのは雨の降っているときであり、落雷の可能性をどれだけの人が正しく判断出来るでしょう。
安全な状況が誰でも的確に判断できると言うのであれば、登山はもとより、ゴルフやサーフィンの最中に落雷で亡くなる人はいないはずです。個人的に自分の責任で使っているというのならまだしも、安易に人に勧めるべきではないと私は思います。
・富士登山中に、晴れているのに雷が聞こえる
富士山の特に静岡県側を登っていると、空は快晴なのに「ドドーン」と落雷のような音が響き渡ることがあります。これは、雷ではなく、富士山の麓にある自衛隊が演習で砲撃している音のようです。
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よくある迷信

Q.金属を身につけていると危ない?
A.昔は広く信じられていた迷信です。現実的には、1億ボルトにも達する雷の大電圧の前では、金属と人体の導電性の違いなど、大した意味を持ちません。これは、絶縁性の高いはずの樹木に落雷することからも分かります。ゴム長靴やビニールの雨合羽が何の備えにもならないのも同じ理由です。そもそも、空気自体が電気を通さない絶縁体なのですが、その絶縁さえ破壊するほどの大電圧を発するのが雷なのです。

一方で、人に落雷した場合に金属を身に着けていると、落雷の電流が金属へと流れることで人体内に流れる電流が減り、金属との接触部分の皮膚がヤケドはするものの死亡を免れるというケースが報告されています。
Q.稲光から雷鳴が聞こえるまでの間隔が開いて来たら、雷は遠ざかっている?
A.雷鳴の聞こえる距離は10~14km程度とされていますが、その距離はすでに雷雲から雷が及ぶ範囲に入っています。姿勢を低くして、一刻も早く建物の中に避難しましょう。しかし、雷鳴が聞こえていなくても安全というわけではありません。落雷の最初の一撃があなたに落ちるかも知れないからです。雷鳴のあるなしに係わらず、雷雲が発生していたら落雷の危険性があることを認識してください。

また、雨が降っていなくても雷は発生します。雷に激しい雨は付き物ですが、雨に先駆けて落雷するケースも決して珍しいものではありません。実際に雨が激しく振り出してから避難するのでは、完全に逃げ遅れになっていると言えます。同じように、雨がやんだり雷鳴が聞こえなくなったからといって安全ではありません。雷は雷雲が完全に消滅するまで続くので、雷鳴が聞こえなくなってから少なくとも20分は安全な場所に留まる必要があります。

つまり、雷光と雷鳴の間隔を測って、「近づいて来た」、「遠ざかっている」などと判断することは無意味です。それは単に落雷した場所の遠近が分かるだけであり、遠くで落雷したからといって次にあなたの上で発雷しないという保証は全くありません。全ては、雷雲の落雷範囲に入っているかどうかだけなのです。
Q.雷様はおヘソがお好き?
A.雷が鳴ったときにおヘソを出していると、雷様におヘソを取られてしまうことがよく知られています。ですので、当サイトでは登山中のヘソ出しファッションは禁止と指導しています。おヘソを取られたくなかったら、身体を丸めて低くしゃがむのが良いでしょう。なお、雷避けに「クワバラクワバラ」という呪文を繰り返し唱えるといいとされています。似てはいますが、「クワバタオハラ」と唱えても効果はありません。
Q.雷様は太鼓を叩いている?
A.太鼓は叩いていません。ウクレレを弾いています。
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