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LastUpdate 2016/04/28

富士山の気象条件

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山の天気が変りやすいのは登山の常識です。特に富士山では天候が登頂の成否を分けるだけでなく、ときには命に関わるものです。正しい知識を身につけ、想定しうるあらゆる状況に対処できる装備を揃えて登りましょう。

富士山山頂は夏でも冬の寒さ

平地との温度差は?

平地がうだるような暑さの真夏でも、山頂は真冬の寒さです。夏でも疲労凍死者が出る山の寒さを侮ってはいけません。

国際標準化機構(ISO)の定める国際標準大気では、気温は海面から高度11kmまでの対流圏において、100m上昇するごとに0.65℃ずつ下がると定義されており、これを気温の逓減率(ていげんりつ)と言います。

また、山の斜面など地表面に近い場所では地面が熱を放射するなどの理由によって、空気だけの状況よりも気温の変化が小さくなり、逓減率の平均はおよそ0.55℃になるとされています。つまり、富士山周辺の天気予報から富士山山頂の気温を予想するには、100mごとに0.55℃気温が下がるという計算を当てはめることになります(一般的にはより計算しやすく100mごとに0.6℃の低下とすることが多いようです)。

一日で26℃の気温差を体感する

気象庁の気象観測所の標高は、それぞれ河口湖が860m、静岡が14m、三島が21mとなりますから、静岡や三島の予報が30℃の真夏日でも富士山山頂は約20℃低い10℃付近になると予想されます。同様に最低気温が25℃という熱帯夜の予報でも、山頂は約5℃と真冬並みの寒さになる計算です。
もちろん、これはあくまでも目安に過ぎませんから、それ以上の温度差になることも有り得るので注意が必要です。

このように、平野部の都市に暮らす人が富士山に登ると大きな寒暖差に直面することになります。日中と夜間の温度の差は大体6℃前後ですから、一日で26℃もの気温差に晒されることになり、それだけでも身体に対する負担がいかに大きいかが分かるでしょう。ですので、富士登山では真夏でも防寒着が必須装備とされているのです。

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風の強さは台風並み

風は命も奪う

一般に、風速が1m/s強まるごとに体感温度は1℃下がると言われています。

富士山山頂の風速は、7,8月で月平均6~10m/sが大半を占めています。9月では、8~11m/sが多い傾向にあります。山頂の明け方にご来光待ちをする場合、気温5℃で10m/sの風が吹いていれば体感気温はマイナス5℃となり、軽装では耐えられないほどの寒さになることが分かります。
また、5m/s程度の風であっても雨や汗で衣服が濡れた状態では、体温が急激に奪われるために、低体温症や疲労凍死に至る恐れが高いのです。

実際に平均でこれだけの風が吹いていますから、風速15m/s以上の風が吹き荒れることも珍しくありません。富士山山頂での風速の観測は、2004年8月25日を最後に観測所が無人になって以来行われていませんが、一例として2003年8月の日ごとの記録を見ると、最大風速15m/s以上の日が11日と3分の1を占めています。
台風の定義が最大風速17m/s以上の熱帯低気圧ということですから、台風並みの強さの風が富士山山頂では頻繁に吹いているということになります。

ちなみに、東京の風速は、7,8月の月平均で2m/s台後半から3m/s台後半が大半を占めています。これは、大阪も同様で、東京よりは2m/s台が多く、やや風が弱い傾向はありますが、大差はありません。

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ビューフォート風力階級表

ビューフォート風力階級表とは、風の強さを客観的に表すために、観測される事象に対応する風速を割り出して階級に分け、表にまとめたものです。

風力
階級
推定風速(秒速)名称地表物の状態
00~0.2m/s平穏(へいおん)静穏。煙はまっすぐに昇る。
10.3~1.5m/s至軽風(しけいふう)風向きは煙がなびくのでわかるが、風見には感じない。
21.6~3.3m/s軽風(けいふう)顔に風を感じる。木の葉が動く。風見も動きだす。
33.4~5.4m/s軟風(なんぷう)木の葉や細かい小枝がたえず動く。軽い旗が開く。
45.5~7.9m/s和風(わふう)砂埃がたち、落ち葉や紙片が舞い上がる。小枝が動く。
58~10.7m/s疾風(しっぷう)葉のある灌木がゆれはじめる。池や沼の水面に波頭がたつ。
610.8~13.8m/s雄風(ゆうふう)大枝が動く。電線が鳴る。傘はさしにくい。
713.9~17.1m/s強風(きょうふう)樹木全体がゆれる。風に向かっては歩きにくい。
817.2~20.7m/s疾強風(しっきょうふう)小枝が折れる。風に向かっては歩けない。
920.8~24.4m/s大強風(だいきょうふう)屋根瓦が飛ぶ。人家にわずかの損害がおこる。
1024.5~28.4m/s全強風(ぜんきょうふう)陸地の内部ではめずらしい。樹木が根こそぎになる。人家に大損害がおこる。
1128.5~32.6m/s暴風(ぼうふう)めったに起こらない広い範囲の破壊を伴う。
1232.7m/s~颶風(ぐふう)被害が更に甚大になる。
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山の雨は下から吹き上げる

山ではシッカリした雨具が必要なわけ

富士山に限らず、登山で使用する雨具は上下が分かれた『セパレートタイプ』でなければならないとされています。ポンチョやロングコートのような雨具がなぜダメかというと、平地と違って山に向かって吹く風は、斜面にぶつかると上に向きを変え、雨を巻き込んで吹き上がってくるからです。
ポンチョのように足元が開いた雨具では下半身がびしょ濡れになり、濡れた衣服は体温を奪うために低体温症から疲労凍死に至ります。

さらに、吹き付ける強風は雨具をパラシュートのように孕ませ、風に煽られて転倒、滑落という事態を引き起こします。風は雨具の隙間から吹き込みますから、上下が分かれていても100円ショップで売っているようなボタンで前を留めるレインコートでは同じことです。
必ず、前身ごろは止水ジッパーで閉められ、フード、袖、裾などをドローコード(締め紐)でピッタリと絞れる本格的なレインウェアでなければなりません。

笠雲(かさぐも)は悪天候のサイン

特に、笠雲(レンズ雲)が山頂に掛かっているときは強風が吹いているサインです。これは、上空の風が山頂近くの山体にぶつかって上に跳ね上げられた空気によって作られる雲で、風の強いときによく見られるそうです。そして、笠雲は天気が悪くなる前兆でもあります。これは、古くから『観望天気』の一類型としてよく知られていますが、笠雲は強風の印であり、強風が吹いているということは、その一体が強い低気圧に覆われているということです。低気圧には湿った空気が流れ込むので、天気が悪化するということになります。
これが、「富士山に笠雲がかかると雨」と言われる所以ですが、「笠雲が出来たから雨」ではなく、「強い風が吹いているから笠雲が出来る」が正解です。

吊し雲(つるしぐも)も悪天候のサイン

同じように天候悪化の前兆として吊し雲があります。笠雲との違いは、富士山からやや離れた上空にレンズ雲が幾重にも重なったような形やブーメラン(翼)のような形で現れることです。これは富士山の山体を回り込んだ風が風下側で乱流の渦を巻き、上昇気流となって雲を形作ります。この吊し雲も強い低気圧による風の影響によるものなので、天気が崩れる兆候とされています。

海に近い独立峰の特徴


積乱雲の発達過程
(GIFアニメ)

「山の天気は変りやすい」とよく言われますが、相模湾や河口湖、山中湖など水辺に囲まれ、尚且つ独立峰であるがために海や湖との間に遮るものの無い富士山では、地形的に湿度の高い風の影響を直接受けるため目まぐるしく天気が移り変わります。これは、特に夏の日差しが強いときに、地表や海面(湖水面)が暖められるのですが、水は地面に比べて暖まりにくいために温度差が出来、その温度差のために上昇気流の勢いに違いが生まれ、大気の密度の差となります。
つまり、大気の密度の薄い陸地に向かって、水面上から湿度の高い風が流れ込みます。これが富士山の斜面にぶつかって上昇し、上空の冷たい空気に当たり冷やされて水蒸気となり、水蒸気は比較的重いために上昇を止められますが、それでも下からは次々に湿った風が流れ込むため雲が出来上がります。下から来た風は比較的暖かい為に、上空の冷たい空気とぶつかって大気を不安定にさせ、出来上がった積乱雲により雷雨となります。

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富士山の初雪、初冠雪(積雪)

冬の訪れをつげる

富士山初冠雪日(直近10年)
2005年10月11日
2006年10月7日
2007年10月6日
2008年8月9日
(1894年からの観測史上最も早い記録)
2009年10月7日
2010年9月25日
2011年9月24日
2012年9月12日
2013年10月19日
2014年10月16日
2015年10月11日

富士山の山頂付近に雪が積もることを初冠雪(はつかんせつ)と言います。富士山で初冠雪が観測されると気象庁から発表されますが、これは甲府地方気象台からの目視によるものです。静岡県側は三島測候所が2003年に廃止されたために、現在は初冠雪の観測・発表は行われていません。

富士山の初冠雪平年日は9月30日となっていますが、甲斐駒ヶ岳(標高2,967m)の初冠雪平年日が10月27日ですから、富士山の方がおよそ1ヶ月も早いことになります。また、初雪の平年日は9月14日ですが、富士山では7,8月も含めて1年中雪が降る可能性があります。

富士山に降った雪が溶けずに根雪になると、富士登山のシーズンも完全に終了です。初心者のみならず、ベテランであっても冬山経験の無い人が山頂まで登るのは命の危険が伴うということです。

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