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LastUpdate 2016/04/28

日帰りと山小屋泊の比較

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富士登山のプランには、大きく分けて日帰りと山小屋への宿泊のふたつがあります。



日帰りと山小屋泊どっちがいい?

登るべき山と主要な目的、ルートを定めた後は、どのようにしてその目標を達成するか、その方法を考えましょう。
まず選択肢として、宿泊を前提としない日帰り登山と、一日あたりの負担を減らすことを目的とした山小屋宿泊による、1泊2日(あるいはそれ以上)の行程の2つがあります。それぞれにメリット、デメリットがありますが、やはりここでも重要なのは、「目標」を達成するにはどちらが有利かという視点です。元々仕事の都合などで2日分の休みが取れないなどという人は、そもそも選択肢が無いわけですから、迷うことはありません。ここでは、どちらでも選べるという人を対象に考えてみました。
では、日帰りと山小屋泊を分ける要素とは何でしょうか?経済的な理由を別にすれば、体力と体調管理でしょう。さらに山小屋の快適度というのも盲点です。

体力の問題
富士山の標準コースタイムは、登りだけで6~7時間(御殿場ルートは9時間弱)となっており、これだけの長い時間登り続ける体力があるかどうかが課題です。そして、登頂だけで体力を使い果たすようではいけません。下山のために少なくとも3割の余裕が必要です。実際に富士山を登っている若者を見ていると、ほとんど体力を使い果たして息も絶え絶えになっている様子からして、10代20代でも全くスポーツをしていないようでは、日帰りは厳しいようです。しかし、事前に2~3回でも登山を経験していれば、10~30代であれば日帰りで行けるはずです。40代以上では、普段からスポーツ、登山をしているか、少なくとも毎日散歩を欠かさないぐらいでないと、日帰りは難しいと考えるべきでしょう。
とは言いつつも、絶対に無理というわけではありません。ようは、体力の不足を補う登り方が出来るかどうかです。いずれにしても、事前に少なくとも1回は練習登山をしましょう。「ぶっつけ本番」では、あなたが日帰りできるかどうかは誰にも(あなた自身にも)分かりません。
体調管理の問題
体調管理とは、一言で言えば、登山前に睡眠を十分に取れるかどうかです。特に山頂でのご来光を目的とする場合は、日帰りでは夜間の登山となり、徹夜でなくとも睡眠不足であることは避けられません。遠くから来るのであれば、麓か5合目辺りに前泊が必要ですし、比較的近くからであっても、5合目に停めた車内で仮眠を取るか、電車や高速バスの席で十分な休息を取る必要があります。前日夕方や夜中に自宅を出発するのであれば、早めに寝るような変則的なことが出来るかどうかですが、多くの人にとっては難しいと思います。

もうひとつは、高山病の問題です。山小屋に泊まると翌朝に高山病の症状を訴える人が少なくないようです。これは、睡眠中は呼吸が抑制されるために、酸素不足になって高山病を誘発するようです。これを避けるには、出来るだけ標高の低い場所にある山小屋に泊まるべきですが、その分山頂からは遠くなるので、翌日が厳しくなるという悩ましい問題があります。
山小屋の快適度の問題
ここまでは、山小屋に泊まれば体力が回復するという前提で書いてきました。しかし、これは必ずしも全てのケースに当てはまるわけではありません。というのも、山小屋泊は山小屋泊なりの問題を抱えているからです。
これは、主に山小屋の混雑と設備に起因する問題です。山腹や山頂の狭い敷地に建つ山小屋は、下界のホテルのようなスペースは確保できませんから基本的に大部屋に雑魚寝となり、個室が取れる山小屋はほとんどありません。しかも、宿泊客が多いときには畳一枚分の広さに2~3人が詰め込まれることもあります。そうなると、ゆっくり体力を回復させるどころではなく、慣れない人では眠れぬまま出発の時間を待つことになり、却って疲れるということにもなりかねないのです。
(※もちろん、快適に過ごせるように気配りされた山小屋も多くありますし、いつでも満員で混雑しているわけでもありません。)
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登山プランから日程を考える

必要時間日照時間
吉田ルート9時間35分7月上旬15時間弱
須走ルート10時間5分7月中旬14時間半強
御殿場ルート12時間10分7月下旬14時間半
富士宮ルート9時間5分8月上旬14時間強
プリンスルート約9時間半8月中旬14時間弱
お鉢巡り1時間45~50分8月下旬13時間半
食事、大休止1時間30分~2時間以上9月上旬13時間強
高度馴化30分~1時間9月中旬12時間半強

これまでも書いてきたように、登山には様々なパターンがあり、体力以外にもそれぞれに考慮すべき課題があります。それは、主にバス利用による運行時間の制約です。
予定通りに歩けても、下山時刻にバスが終わっていては帰宅出来なくなります。それぞれのケースごとに、大まかな時間を掴んでおくとスケジュールも立てやすくなるでしょう。

日中 日帰り登山(移動時間を除いた登山日数:1日)
登山においては、「日没前に下山を終える計画を立てる」ことが常識とされます。富士登山シーズンの日照時間は12~15時間ですが、一方で標準コースタイムは9~12時間となっていて、食事や大休止(景色を眺める時間含む)、高山病対策のために5合目で高度馴化するための時間、お鉢巡りに費やす時間を考えると日帰りは時間的にギリギリであることが分かります。コースタイム通りに歩けない初心者であればさらに厳しいと言えます。

マイカーやタクシーを利用するのであれば、夜明け前から登り始めることで帳尻を合わせることが出来ますが、運行時間が決められているバスを利用する場合は、日帰り登山は時間的に厳しいのです。(※5合目へのバスは、夜明けから1~3時間後に運行を始めるので実際にはさらに短い)
さらに、下山は夕方日没ごろになるので、その日に帰宅する予定であれば、電車の時間が気になるところです。
ご来光 日帰り登山(1日半)
山頂でのご来光を目指すのであれば、どの登山口から登る場合でも前日の夜から登り始める必要があります。この場合に問題になるのは、終バスが早めに終わってしまうことです。吉田ルートであれば午後10時過ぎ5合目着(2011年の場合)までありますが、他の登山口では午後5時前~8時半ごろ(2011年の場合)には終わってしまうので、時間が余り過ぎてしまうことがあるのです。
一方で、下山は午前中になるので、バスや電車などの心配はあまりありません。

山頂ご来光/山小屋前ご来光 一泊登山(2日)
山小屋泊では、夕食付きで予約した方は、午後4時半には着くように計画しましょう。時間に遅れても宿泊を断られることはありませんが、遅くとも5時前に到着するのがマナーです。夕食無しでも、消灯直前に駆け込むのは喜ばれません。午後5~7時の山小屋指定の時間前に到着出来る計画を立てましょう。

宿泊する山小屋の位置によっては登り始めが午後になっても間に合うので、近くに住まわれる方でしたら移動時間を含めて2日で登山を終えることも可能です。

山頂宿泊 一泊登山(2日)/二泊登山(2日半)
山頂の山小屋へ宿泊する場合は、日帰りの計画から下山の時間を差し引いた分だけ余裕があります。出発を早めれば、その日のうちにお鉢巡りも出来ますし、夕陽を見たり、夜空を眺める余裕も作れるでしょう。高所での宿泊は高山病に掛かるリスクが比較的高まるので、ご来光を見たらすぐに下山出来るように計画を立てると良いと思います。

下山も早くなるので、午後いっぱいは自由に観光しても良いですし、遠方で無ければその日のうちに帰宅する計画も立てられるかも知れません。一方で遠方から来られる方は、前日に5合目か山麓のホテルなどに宿泊して、身体を休めて登山に備えましょう。
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柔軟に考えよう

さて、こうなると、ますますどっちにするか迷うという人も多いでしょう。ではどうするべきか、ここでもやはり最初に決めた「目標」が何だったかを思い出してみましょう。登山計画とは、まず計画ありきではなく、目標を達成するために柔軟に変えていくべきものです。計画立案の原点に戻り、様々な可能性を模索してみましょう。それでも無理そうであれば、根本的に「目標」から見直すことも必要です。山頂でのご来光が目的だったのを、山小屋や登山道の途中からにするとか、ご来光を諦めるという判断もあっていいと思います。

また、最初に挙げた選択肢の中で、「行ける所まで登る」という項目がまだ説明されていないことに気付いた人もいるかも知れません。そうです、山頂にたどり着くことだけが登山ではありません。8合目や宝永山を目標にしてもいいですし、今年は行ける所まで登り、来年は山頂を目指すという段階的な計画を立てるのもいいでしょう。最初の目標や日程に縛られず、現実的でより安全な計画を立てることによって、いつか必ず目標が達成出来るでしょう。

それでも最初の目標に拘りたい

そうは言っても、折角の富士登山。遠方から来る方などは、一生に一度と決めているかも知れませんね。ここまで細かい理屈を並べて来ましたが、登山に最も必要なのは歩き続ける忍耐力(諦めない心)と言われるように、最後は登山者のどれだけ登りたいかという気持ちが大事です。どんなに体力が有り余っていても、飽きっぽかったり苦労を厭う性格では、山頂まで気力が続かないでしょう。(※注意:但し、寒い、激しく頭が痛い、吐き気がする、意識が朦朧とする、なんてのは我慢し過ぎないで下さい。忍耐はあくまで体力的なことだけです。)

実際に富士山には、5歳の保育園(幼稚園)児から、最高齢は101歳まで登っています。園児の例は、普段から野歩きをさせる園の方針で鍛えられているので一概に5歳児でも大丈夫とは言えませんが、少なくともそれだけの体力とトレーニングによる準備を行えば、誰でも登頂出来る可能性があるということです。

ですから、あなたがどうしても富士山に登ってみたいと思うなら、思い悩む前にまず登ってみることです。日帰りでも山小屋泊でも富士登山は富士登山です。山を登ることに何も変りはありません。富士登山は簡単じゃないと色々脅していますが、これは安全を第一に考えてのことで、実際には言うほど難しくも厳しくもありません。逆にそこまで思い入れがなくてもいいのです。たかが登山ですから、「登れるところまで登ってダメなら諦める」、ぐらいの気持ちでもいいのです。「こうしなければいけない」、ということはありません。ただ、天候の急変、寒さ、怪我や膝痛への備えだけは忘れないでください。安全に楽しく、それが私の願いです。

さて、やや無責任ながら、日帰り、山小屋泊どちらでもお好きな方で、という結論が出たところで次のページでは、具体的なタイムスケジュールの作成方法を考えてみましょう。

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