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LastUpdate 2016/07/29

富士山登山ルートの選択

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このページでは、初めて富士山に登る方がどのルートから登るべきか、比較のために参考となる資料を集めました。

4つの登山口、5つのルート

山頂へ登る道は、ひとつではない

富士山には主要な登山口(登山道)が4つ有り、そこから5通りのルートが山頂へ繋がっています。ルートごとに登山口の標高や登山道の距離は異なります。ルートの特徴を理解して、自分の目的や体力に合わせてルートを選ぶことが大切です。

Check Point!

富士山の主要な4つの登山口

  • 富士スバルライン五合目(吉田ルート)
  • 須走口五合目
  • 御殿場口新五合目
  • 富士宮口五合目

富士山の5つのルート

  • 吉田ルート
  • 須走ルート
  • 御殿場ルート
  • 富士宮ルート
  • プリンスルート(富士宮口五合目スタート、御殿場ルートへ抜ける)

登山のスタート地点

登山のスタート地点は、「登山口(とざんぐち)」と呼ばれています。

富士山に限らず、一般的にバス停や駐車場から、舗装されていない土の地面への入口が登山口と看做されます。富士山の場合は山の中腹まで車道が通っているので、一般的にその道路の終点である「5合目」が登山口とされています。

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登山道と下山道

登りと下りは別の道

登山では、普通は登ったのと同じ道を往復して降りることになります。しかし、富士山では、登り用の「登山道」と、下り用の「下山道」が別れている部分があります。

時々、下山道があることを知らずに登山道をそのまま下って来る人を見かけます。登りと下りが分かれているのは、登山道が下るに難しく、下山道が登りに適さないからです。それを逆行するのは無駄に疲労しますし、危険でもあります。但し、急病や体調不良などで登山道を引き返すことは構いません。逆行が禁止されているわけではないので、状況に合わせて適切な判断をしてください。

たまに、「登山道は登山専用だ!下って来ると邪魔で迷惑だ!」なんて勘違いしている人も居ますが、決してそんなことはありません。そういう場合は、「体調が悪いので途中から下って来ました」などと言ってやり過ごすといいでしょう。

富士宮ルートだけ、下山道が分かれていません

なお、富士宮ルートだけは、全線で登山道と下山道が一緒になっていますので、登って来た道をそのまま引き返します。下山道を探して、間違ってブルドーザー道に迷い込まないように気をつけましょう。

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ルートを数字で比較

距離は倍以上も違う

登山口の標高で比べると、吉田口と富士宮口がほぼ同じ高さ。須走口が一段下がって、御殿場口が遥か下に位置しています。登山口の標高が低いほど山頂までの道は長く、時間も掛かりますので、それだけ体力も要求されるわけです。

往復コースタイムの長さで比べると、時間が短い方から以下の順番となります。

富士宮ルート吉田ルートプリンスルート須走ルート <<< 御殿場ルート

登山道
吉田ルート須走ルート御殿場ルート富士宮ルートプリンスルート
山頂標高3,706m3,706m3,706m3,712m3,706m
5合目標高2,305m1,970m1,440m2,380m2,380m
累積標高差+1,436m+1,746m+2,266m+1,332m+1,386m
距離
(登り)
6.3km7.7km10.5km4.3km**6.4km
標準コースタイム
(登り)
5時間55分6時間55分8時間20分5時間10分6時間
標準コースタイム
(下り)
3時間10分3時間3時間30分3時間30分*3時間30分
*2時間55分
※累積標高差とは、下り分を含めない登りの高度差のみを足した数値。*御殿場口へ下山。*富士宮口へ下山。**地理院地図を使用し管理人が計測。※このサイトにおける「山頂」とは各登山道の終点、つまりお鉢巡りコースとの合流地点とし、最高地点「剣ヶ峰」とは分けて表記しています。各登山道終点の標高は、こちら(静岡県/県道富士公園太郎坊線標高日本一)を参考にしています。

設備で選ぶなら吉田ルート

山小屋やその他施設の充実度では、吉田ルートが飛び抜けて整っています。しかし、本来、登山というのは整備された場所を歩くものではありませんから、必ずしも整備や施設が行き届いたルートが良いというわけでもありません。むしろ、過剰な整備は登山の趣(おもむき)を損ねる場合もあるのです。

山小屋/施設
吉田ルート須走ルート御殿場ルート富士宮ルート山頂
軒数
(重複あり)
ルート上16軒
5合目5軒*
ルート上9軒
5合目2軒
ルート上5軒
5合目1軒
ルート上7軒
5合目1軒
ルート上5軒
収容人数合計
(重複除く)
ルート上3,320人
5合目218人
ルート上835人
5合目70人
ルート上540人 ルート上1,230人
5合目30人
ルート上380人
救護所 ルート上2箇所5合目1箇所 - - ルート上1箇所 -
*小御嶽神社含む
データの説明

標準コースタイムについて

上表の標準コースタイムは、昭文社発行の『山と高原地図 富士山 御坂・愛鷹』2012年版を参考にしています。この標準コースタイムは、①40~50歳の登山経験者②2~5名のパーティ③山小屋利用を前提とした装備(テントを持たず比較的軽量という意味)④夏山の晴天時における食事やトイレなどの休憩(大休止)を含まない、正味の時間となります。食事や写真撮影、トイレなどの時間を加えた実際の登山ではさらに時間が掛かりますので、計画を立てる際には注意が必要です。

また、他の富士登山サイトを見るともっと短時間で表記されていることが多いようですが、私の実感としては、登山初心者には上記の数字が現実的だと思います。

登山道の距離と5合目の標高について

5合目登山口から山頂までの距離は、紹介するサイトによって長さが結構バラバラです。他の方が何を参考にしているのか分からないのですが、このサイトでは登山道に設置された看板、標識などを基にしています。

また、5合目の標高は、登山口にある看板よりも『地理院地図』から読み取った数値を優先しています。例えば、富士宮口には標高2,400mを示す看板がありますが、その看板は登山口の階段を昇った所に設置されており、5合目の実際の標高は2,380mです。このように、看板や標識、資料ごとに数字が食い違っていることも珍しくありません。当サイトでは、より実質に近いと思われる資料を基に表記するようにしています。

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電車とバスでアクセス

アクセスのしやすさからルートを選ぶ

登山の計画を立てる上で、登山口までのアクセスも重要な要素です。アクセスが容易であるほど登山中の行動時間が増え、余裕が生まれることで登頂の成功率も上昇します。

富士山では、登山口の5合目まで登山バスが運行しています。

電車+バスアクセス
富士スバルライン五合目行き
(吉田ルート)
須走口五合目行き御殿場口新五合目行き富士宮口五合目行き
バス路線本数2本2本1本3本
登山バス最寄り駅 始発富士山駅
始発/経由河口湖駅
始発御殿場駅 始発御殿場駅 始発三島駅
経由裾野駅(経由)
始発新松田駅 始発新富士駅
経由富士駅(経由)
始発/経由富士宮駅
5合目直通高速バス 始発新宿駅 - - 始発静岡駅
経由富士宮駅(経由)

関東から便利な吉田ルート/関西から便利な富士宮ルート

富士宮ルートの最寄り駅が多いですが、必ずしも利便性の良さを示すものではありません。大事なのは、バスの運行本数と始発、終発の時間。電車とバスの乗り継ぎが計画に合うかどうかです。いずれにしても、お住まいの地域と日程で、ある程度選択肢は絞られてしまいます。遠方から来られる方は、麓で一泊する計画を立てた方が安全確実です。時間的にギリギリな計画は、得てしてちょっとした手違いで容易に破綻するものだからです。

登山バスと高速バスの違い

『高速バス』というのは、ようするに高速道路を走行する長距離バスのことです。長距離バスは、電車よりも料金が安くなるので人気が有ります。

富士登山用に運行される高速バスは、富士山の麓の駅で乗り換えずに5合目まで直通で行ける路線が設定されているということです。但し、途中でコンビニなどに立ち寄ることが出来ないので、バスに乗る前に食料などの準備を終えている必要があります。SA(サービスエリア)に立ち寄るかどうかも、予め調べておいた方がいいでしょう。

『登山バス』は、街中を走っている一般の路線バスと同じ運行形態なので予約は必要ありませんが、混雑すると立ち乗りになることもあります。一方、『高速バス』は予約が必要ですが、全席指定になっているので立ち乗りになる心配はありません。逆に言えば、予約が必要な高速バスは急な日程の変更が出来ません。天候が悪いなどの理由で登山を中止するとキャンセル料が発生するデメリットがあります。日程の設定には注意が必要でしょう。

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車でアクセス

マイカー規制日を確認しよう

富士山の5合目までは、車道が通じています。しかし、夏の登山シーズンは5合目までのアクセス道路にマイカー規制が行われます。規制期間中は、富士山の麓に用意された大型駐車場に一旦車を停めて、シャトルバスに乗り換えて5合目まで行くことになります。

御殿場口を除く3つの5合目登山口へ通じる道路は、7,8月のほとんどの日でマイカー規制が行われるので実質的にマイカー登山がほとんど出来なくなりました。その分、9月のマイカー規制明けに車が集中して混み合うので、尚更マイカー登山がし難くなっています。

唯一、御殿場口だけはシーズン中も駐車場も空きがありましたが、近年は他の登山口のマイカー規制を避けて御殿場口に来る人も増え、駐車場も混雑するようになって来たようです。

マイカーアクセス
吉田ルート須走ルート御殿場ルート富士宮ルートプリンスルート
アクセス道路富士スバルラインふじあざみライン県道太郎坊線富士山スカイライン富士山スカイライン
(県道太郎坊線)
通行料有料無料無料無料無料
5合目駐車場無料無料無料無料無料
収容台数330台+沿道500台200台500台500台500台(+500台)
マイカー規制
規制日数53日
[2015年]
47日
[2015年]
なし63日
[2015年]
(63日)
[2015年]
シャトルバス乗換駐車場富士北麓駐車場須走多目的広場水ヶ塚公園駐車場
乗換駐車場収容台数1,400台480台1,000台
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登山者数の比較

登山者は減少傾向

2014年(平成26年)の登山シーズンの登山者数は、前年から大きく減少しました。

その要因として、残雪が7月中旬まで残り、特に静岡県側の開山日が遅くなったことや、梅雨明けの遅れ、台風などで天候が優れなかったことが挙げられています。

登山道別の登山者数
(環境省調べ:平成26年7月1日~9月14日)
登山者数(人)
(割合)
昨年からの増減*
(割合)
吉田ルート170,947
(60%)
▲37,724
(▲21%)
須走ルート33,092
(12%)
▲7,399
(▲20%)
御殿場ルート16,963
(6%)
▲2,206
(▲12%)
富士宮ルート64,492
(23%)
▲19,730
(▲26%)
合計285,494▲67,059
(▲22%)
*2013年は7/1~8/31の調査であり、日数を合わせるため7/1~8/31の期間同士を比較

登山者数が圧倒的に多い吉田ルート

ルートごとの登山者数を比較すると、山梨県側の吉田ルートだけで6割を占めています。これは、吉田ルートの登山口となる富士スバルライン五合目が、新宿など首都圏からのアクセスに優れること、山小屋の収容人数のキャパシティが多いことなどが理由として挙げられるでしょう。

静岡県側の3ルートは、神奈川県や関西方面からのアクセスに優れますが、5合目駐車場が大型バスを多く停められるほどの広さが無く、ツアーなどの団体登山者が集まりにくいことが要因として考えられます。

人気のルートがいいとは限らない

単純に考えると、人の多いルート=人気のルートと考えて、「人気のあるルートがいいのかな?」と思ってしまうかもしれません。ですが、人が多いということは、それだけ弊害もあるということです。

登山道の幅は狭く、大勢の人が殺到すると渋滞が発生します。特に、御来光前の夜明け近くには、山頂まで延々と渋滞の列が続きます。そのような渋滞は登山の楽しさを削ぐだけでなく、万が一落石や将棋倒しが起こると、危険ですらあります。ですので、人気の有る無しに惑わされずに、自分が富士登山に何を望むかを考えて、慎重にルートを定めることが大切です。

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初心者向きのルートは?

距離(標高差)が短い=初心者向けは本当か?

ガイドブックや他の富士登山サイトでは、富士宮ルートを初心者向きとして薦めているケースが多く見受けられます。5合目から山頂までの「距離(標高差)が短い」ことで「体力的に最も楽」なのがその理由とされています。しかし、それらの理由をもって『初心者向け』と言って本当にいいのでしょうか?

実は、富士山のルート中でも、富士宮ルートは比較的怪我人が多いという統計データがあります。なぜ怪我が多いかというと、他のルートに比べて登山道に岩の露出が多いことが原因としてあげられます。

下りの岩場にはリスクが潜む

しかし、岩の多いのは富士宮ルートだけではありません。他のルートにも傾斜の急な岩場はあります。では、なぜ富士宮ルートが取り立てて怪我人が多いのでしょうか?それは、他のルートの岩場が基本的に登りだけであるのに対して、富士宮ルートでは下りも岩場になっているからです。

先にも説明したように、富士宮ルートは登山道と下山道が一緒です。つまり、登りが岩場であれば下りも岩場を通ることになります。登山は登りの方が体力的にキツイですから『登る』ことばかりに目が向き勝ちですが、むしろ注目すべきは下りの方で、遭難の7割以上が下りのときに発生していると言われています。転倒、滑落事故に限れば、もっと割合は高いかもしれません。

特に富士宮ルートの岩の上には砂が載っていて、とても滑りやすくなっています。ただの岩であればむしろ靴底でグリップを効かせやすいのですが、岩の上に砂が載っていると途端に、スリップしやすい危険な落とし穴に変わるのです。

1mは一命取る

一般に、山を標高で呼び分けるとき、『高山』と『低山』などと言います。高山と低山の境目がどこになるかはさておき、初心者の中には「低山は簡単で安全な山」と勘違いしている人も居るようです。ですが、登山の難易度は、標高では決して測れません。

建築や土木関係者の間で語られる警句として、「1mは一命取る」という言葉があります。1m程度の高さであっても、落ちれば命を失うこともあるということです。これは登山も同様で、標高の高さに関係なく、低山であっても1m以上の段差はいくらでもあり、そこから落ちてしまえば高山も低山も違いはありません。

距離が長くても安全な道を選ぼう

前置きが長くなりましたが、岩の上が滑りやすいとうことは、転倒したときに身体を打ち付けるのも固い岩になります。これが頭や腰であれば、身体を動かすのも危険な怪我になりかねず、他にも足首を捻挫するケースなども数多く見受けられます。

このように、標高差や距離だけを判断基準とせず、自分の登山スキル、経験と合わせて、『遠回りで距離や時間は長いけれど、より安全なルート』があればそちらを選んだ方が初心者にとってはいい場合が往々にしてあるのです。

岩場の歩き方を身に着けよう

しかし、やはりコースタイムの短さは登山計画を立てる上で余裕となりますし、交通の便や日帰りを条件としてどうしても富士宮口を選びたいという人もいるでしょう。そのような方へも無理に別ルートへ変更することを薦めているわけではありません。ようは、各ルートごとに特徴があり、その特徴を踏まえた登り方、計画を立てることが大事なのです。

例えば、岩場が多ければ、岩場をどう登るか、また、どう下るか。そこまで考えて準備と練習登山をすることで回避出来る問題でもあります。初心者にとっては危険でも、富士山ぐらいの岩場は登山経験者にはさして難しいものではありません。要は、安全に下れる技術を身につければいいのです。

技術と言っても特に難しいことはありません。岩の角に靴底の溝を引っ掛けるようにすれば、滑りにくくなります。

このように、リスクの存在を知り、それに対して対処法を学んで身に着けることが脱初心者への第一歩です。無闇に体力さえつければそれで登山のベテランということではないのです。詳しくは、以下のページで説明していますので、ご一読ください。

もうひとつのリスク

では、これで富士宮ルートから登るのも安心でしょうか。ちょっと待って下さい。実は、岩場を下るときはさらに別のリスクがあります。それは、膝への衝撃です。

他のルートの下山道の地面は主に砂地なので、足や膝への衝撃をある程度吸収してくれます。ですが、富士宮ルートは岩場が続くので、固い地面は衝撃を吸収してくれず、膝を痛める人が多いのです。

つまり、初心者に限らず、膝に不安を抱える人は、富士宮ルートの下山は避けた方がいいということです。(時々、岩場を大股に駆け下っている人を見かけますが、そのような行為は膝を痛めつけるだけです。ほんの少し早く降りるために一生治らないかも知れない膝痛になるリスクを犯すのは賢明ではありません。10代20代の若いうちなら大丈夫だと思うのも過信です。「膝は消耗品」「膝の古傷」「膝に爆弾を抱える」などと言われるように、若いスポーツ選手でも膝の故障に悩む選手は多いのです。)

いっそ下山だけルートを変える

この膝への衝撃を避けるには、着地のときに膝を曲げてクッションにする、ストックや金剛杖で着地の衝撃を和らげるなどの他に、下山だけ他のルートを使うことも選択肢として有効です。御殿場ルートを使えば、宝永火口経由で富士宮口五合目へ戻ってくることが出来ます。

初心者だからこそ、ルート選びは慎重に行いましょう。

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ズバリ!初心者にオススメのルートは?

目的に合わせたルート選びを

富士山はとても大きな山ですから、ルートごとに特徴が大きく異なります。登るメンバーや目的を明確にした上で、それに合わせてルートを選びましょう。

各ルートの特徴比較
ルート御来光/渋滞子供・年配眺望・風景
富士宮ルート+プリンス下山 日の出は山頂に出ないと見られないが、渋滞は吉田・須走ルートほど酷くない 滑りやすい岩場が危険(初心者)だが、下りは比較的安全 晴れていれば駿河湾が一望出来る。宝永火口も見られて一石二鳥
須走ルート 吉田ルートと合流後に大渋滞になるが日の出は登山道からも見られる 比較的岩場が少なく、途中から引き返すにも安全 樹林帯に癒される
プリンスルート 山頂まで空いている 宝永山の登りがキツイがそこを乗り越えれば安全で楽 宝永火口は一見の価値あり
富士宮ルート 日の出は山頂に出ないと見られないが、渋滞は吉田・須走ルートほど酷くない 滑りやすい岩場が危険(初心者)
コツを掴めば時間的に楽(経験者)
晴れていれば駿河湾が一望出来る
御殿場ルート 山頂まで空いている 転倒のリスクは少ないが距離は長く、山小屋が少ないので大量の水が重荷になる 単調だが日本とは思えない雄大な景色
吉田ルート 大渋滞になるが日の出は登山道からも見られる 岩場が急で段差も大きい、山小屋が多いのは安心 ×人工的に整備され過ぎているが河口湖や日本アルプスの山々が見えるのが救い

以下の順番は相対評価であり、絶対評価ではありません。また、登る時間や条件、あるいはあなたの目的により違ってくるので、ご自分の条件と照らし合わせて最適な登山計画作成の参考にして下さい。

5つ星がないのは、登山初心者は、いきなり富士山を登るのではなく、他にいくつか山を経験してから登るべきだという意味合いを込めています。

★★★★富士宮ルート+プリンス下山ルート

いいところ取りの周回ルート

登り
距離は最も短いですが、細かい砂が載った滑りやすい岩場をひたすら登る、経験者向けのルートです。岩場で転倒すると怪我の恐れが高いので、小さな子供さんには自転車用等のヘルメットを被せてあげて下さい。一方、岩場の登り下りにも慣れた経験者であれば、距離の短さから体力的には最も楽です。登りと下りが一緒の道なので、細い場所でのすれ違いで待たされるなど時間が読みにくいのが難点です。標高が高い五合目まで車で一気に来るので、高山病になりやすいです。意識してゆっくり登りましょう。
下り
山頂から同じ道を引き返すのではなく、あえて御殿場ルートを通り宝永火口に迂回して下山する体力的な楽さと安全を両立したルートです。膝への負担も富士宮ルートの岩場をそのまま下るよりずっと軽くなりますし、宝永山や宝永火口も楽しめます。宝永火口の先で最後の登り返しがありますが、距離は短いのでゆっくり登れば大丈夫です。
設備
適度に等間隔で山小屋が並んでいますので、水分の補給や食事などで有効に活用しましょう。山頂のトイレは、吉田・須走ルート側よりも新しくキレイです。男女別なのも大事なポイントですね。但し、下りは御殿場口七合九勺の赤岩八合館から富士宮口六合目までトイレの間隔が開くので、注意が必要です。診察無料の救護所が一箇所あります。
景色
快晴に恵まれれば、駿河湾を一望出来るすばらしい景色と宝永火口のダイナミックさの両方を堪能出来ます。東側の視界が山体に遮られている為、地平線から昇る日の出は山頂に出るまで見られないのが難点です。

★★★★須走ルート

緑の森を抜けると・・・

登り
山頂での御来光が目的で無ければ、須走ルートがオススメです。
樹林帯の足元はゴツゴツした溶岩で歩きにくいですが、大きな段差は少ないので、怪我のリスクは高くありません。急傾斜の岩場も他の登山道に比較して少ないので、小さなお子さんを連れた方、お年を召した方には安全面、体力面で不安は少ないでしょう。6合目から上は森林限界を越えますが、吉田ルートのような岩場や砂利の地面ではないので歩きやすいでしょう。
難点は、本8合目で吉田ルートに合流して混雑することですが、なかなか前に進めなくなるほどの渋滞は夜明け前のことですから、日の出は山小屋前で見るなどで良ければ問題にはならないでしょう。
下り
下山は、「砂走り」という細かい砂の道を降りるので膝への負担も少なく、万が一転倒しても岩場のような危険はありません。登りの途中で諦めて引き返す場合でも、急な岩場を下らざるを得ない吉田ルートよりも遥かに安全です。
設備
他のルートに比べると山小屋は少なく、トイレなどに不便です。ですが、登山とは本来そういうものです。良い意味でローカルな雰囲気が漂っています。
景色
5合目からのルートでは唯一樹林帯を通り、自然の中を登る登山らしさを味わえます。6合目から上で森林限界を越えてもしばらくは高山植物や灌木が生い茂り、吉田ルートのような殺風景さはあまり感じません。

★★★★プリンスルート

宝永火口は蟻地獄

登り
2番目は、僅差でプリンスルートです。富士宮口の5合目から登り始め、宝永火口を経由して御殿場ルートへと抜けるいいとこ取りのルートです。「プリンス」という名前は、皇太子(徳仁親王)殿下が2008年の富士登山でご利用されたことに由来しています。
唯一の難所は宝永山の稜線に登る斜面で、急傾斜で荒い砂の斜面はズルズルと滑りやすく、力任せに登ると体力を消耗するので多少の歩行技術を覚えておく必要があります。登山道は空いていて渋滞の心配がないので、御来光を目指すにもストレスなく登れるでしょう。
下り
下山は、「大砂走り」を下って御殿場口新五合目へ降りることも出来ますし、また宝永火口を経由して富士宮口五合目へ戻ることも出来ます。
設備
富士宮口六合目から御殿場口七合目までに間は山小屋がありませんが、ルート全体の距離は短いので特に問題はないでしょう。
景色
他のルートでは通らない宝永火口を間近で見ることが出来、宝永山へも登頂出来ます。帰りに大砂走りを下らなくても、晴れていれば雄大かつ茫漠たる砂漠のような景色を上から見下ろすことが出来ます。火山としての富士山を最も堪能出来るルートかも知れません。

★★★富士宮ルート

岩と砂の攻略が鍵

登り
距離は最も短いですが、細かい砂が載った滑りやすい岩場をひたすら登る、経験者向けのルートです。岩場で転倒すると怪我の恐れが高いので、小さな子供さんには自転車用等のヘルメットを被せてあげて下さい。一方、岩場の登り下りにも慣れた経験者であれば、距離の短さから体力的には最も楽です。登りと下りが一緒の道なので、細い場所でのすれ違いで待たされるなど時間が読みにくいのが難点です。標高が高い五合目まで車で一気に来るので、高山病になりやすいです。意識してゆっくり登りましょう。
下り
下山は、砂の載った岩に不用意に足を載せると簡単に転倒します。当サイトの『富士山の下り方』のページで岩場を安全に下りる技術を身につけてから登りましょう。山頂から同じ道を引き返すのではなく、あえて御殿場ルートから宝永火口に迂回するルートも検討することをオススメします。膝への負担も岩場よりずっと軽くなりますし、宝永山や宝永火口も楽しめます。
設備
適度に等間隔で山小屋が並んでいますので、水分の補給や食事などで有効に活用しましょう。山頂のトイレは、吉田・須走ルート側よりも新しくキレイです。男女別なのも大事なポイントですね。
景色
快晴に恵まれれば、駿河湾を一望出来るすばらしい景色が堪能出来ます。東側の視界が山体に遮られている為、地平線から昇る日の出は山頂に出るまで見られないのが難点です。

★★★御殿場ルート

日本とは思えない広漠たる大地

登り
ガイドブックや他のサイトでは、「初心者には無理」とされている最長のルートですが、山小屋への宿泊が前提であれば初心者でも決して無理な距離ではありません。山頂での御来光を目的とするならば、むしろオススメのルートとさえ言えます。ポイントは、朝の涼しいうちに出発することです。
細かい砂の登山道は滑りやすいですが、登りも下りも岩場があまり無いことから他のルートよりも安全で、膝への負担が少ないメリットもあります。登山者も少ないので、自分のペースで落ち着いて登れます。マイカー規制も行われず、お盆や海の日の最も混雑する時期でなければ、新五合目の駐車場が満車になる心配もほぼありません。但し、初心者が日帰りで登るのは無謀です。
下り
下山は、岩場というほどの場所はありませんが、浮石には気をつけてください。7合目から下では「大砂走り」と呼ばれる厚く砂が堆積した一本道を降ります。無理に駆け下らなければ膝への負担も少なく、安全です。
設備
7合目まで山小屋がないので、水などの補充が出来ません。南東斜面で強い日差しに長時間晒されるので、大量の水を担げるだけの体力が必要です。トイレの間隔も長いので、特に女性の方は注意が必要です。
景色
単調な登りが長く続きますが、日本とは思えない雄大な景色が魅力です。足元ばかりに気を取られず、時々振り返ってその景色を堪能しましょう。

★★吉田ルート

意外と険しい岩の壁

登り
最も登山者が多いルートで、山頂での御来光が目的であれば混雑と渋滞にうんざりすることになるでしょう。朝から登る分には言うほど混雑しないですが、ツアー登山の団体が出発するお昼前後は避けた方がいいでしょう。
急傾斜で段差の大きい岩場が多く、身体の小さな子供さんやご年配の方にはキツイでしょう。岩場から転落すると重篤な怪我をしますので、小さな子供さんには自転車用等のヘルメットを被せてあげて下さい。
下り
下山は、砂で滑りやすい九十九折れの道が延々と続く、富士山で最も退屈で過酷な下山道です。しかし、6合目まで岩場は無いので危険度は少ないです。但し、登山の途中でリタイアする場合には、急な岩場を引き返すことになるので、怪我のリスクがとても高くなります。
設備
山小屋が多いので安心ですが、下りでは8合目から下に山小屋が無いので水切れとトイレには注意してください。診察無料の救護所が二箇所あります。高山病が悪化する前に下山出来なかったら、救護所を頼るしかありません。
景色
落石止めと登山道崩壊防止のために人工的な手がかなり加えられており、登山らしい自然や情緒はあまり味わえません。河口湖や山中湖、日本アルプスが見えますが、山頂に出るまで景色に見所は少ないと言えるでしょう。
Check Point!

自分がどこから登って来たのかぐらい覚えておこう

ルート標識の色分け

恐ろしいことに、自分がどのルートを登っているのか、どの登山口に車を置いたのかさえ覚えておらず、山頂から下山するときに間違った方へ下りてしまう方が毎年多く居るそうです。特に、グループで来て引率者とはぐれた人や、ツアー登山者(ガイドなし)などにその傾向があると思われます。登山中にはぐれないようにすることは勿論ですが、はぐれても自分が帰る場所ぐらいはちゃんと覚えておきましょう。

富士山の各登山道に設置された標識は、それぞれルートごとに色分けされています。特に下山時の8合目で吉田ルートと須走ルートが分岐する地点で道を間違いやすいので、ルートの名前だけでなく色でも覚えておくと安心です。

なお、プリンスルートは特に色は決められていませんので、富士宮と御殿場の各ルートの色を参考にしてください。

  • 吉田ルート=黄色
  • 須走ルート=
  • 御殿場ルート=緑色
  • 富士宮ルート=
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