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LastUpdate 2016/04/28

富士宮ルート登山レポート

登山日~28日
天候雨のち曇り
投稿者富士さんぽ管理人 36歳 男
人数単独
プラン一泊日中登山
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富士さんぽ管理人による、須走口五合目~山頂~富士宮口五合目~御殿場口新五合目の登山レポートその2。

霧の中の迷い人

8月27日から28日にかけて富士山に登って来たレポートの続きです。須走口から登り、富士宮口へ下りて来ました。ここからさらに所謂ハイキングコースを辿って、御殿場口5合目へ向かいます。ここまでの記録は須走口のページからご覧ください。

28日 14:23富士宮口5合目発晴れ20℃

さて、富士宮口新五合目に降りて来たのが、すでに午後2時近く。原付バイクは須走に置いてあるから、歩いてそこまで行かなければならない。しかし、富士宮口新五合目からずっと車道を歩くのはさすがに億劫である。折角だから登山道を使って御殿場口新五合目に下り、そこから車道を須走まで歩くことにする。
私が持っている2007年版の山と高原地図(昭文社)では、5合目上のトイレ横から宝永第二火口へ抜ける道が点線で示されているので探してみたが、どうもよく分からない。仕方なく、6合目から第一火口への道を辿る。(どうやら、駐車場の東側から抜ける道に付け替えられている様子)

この道は前にプリンスルートで登るときにも通った道だ。そのときは夜で視界が無いために分からなかったが、長い上り坂が続く見た目にはしんどい道となる。夜間登山では目の前の地面だけ見て登るので、こういう見た目は厳しい道に影響を受けないメリットもあるのかもしれない。
6合目の2つの山小屋の奥の脇道へ入るが霧のため景色は楽しめない。宝永第一火口縁まででは、何組かの登山者とすれ違う。山頂へ直接向かう登山道ほどではないが、有る程度は宝永登山を訪れる登山者がいるようだ。

14:53宝永第一火口縁着

火口の上に着くと、当時の噴火のすさまじさが想像できる。この景色は富士山でもここだけでしか見られないものだ。それだけに、マイナーではあるが、このコースを歩く価値があると言えるだろう。

特に、第二火口へ続く稜線から見る、火山ならでは荒涼とした山肌を見せて屹立する宝永山の高度感、スケールの大きさには言葉も無い。写真も撮ったのだが、到底この気持ちの1万分の1も再現できていない。宝永山を写した写真は載せないので、ぜひみなさんの目で確かめて欲しい。「富士山は景色が変らず退屈な山」と思い込んでいる人にこそ、このルートをオススメしたい。北アルプスはまだ登った経験がないので私の乏しい登山経験に限定してだが、少なくとも関東近辺の他の山では見ることの出来ないであろう絶景が広がっている。

さぁ、ここからは急な下りとなる。地面は宝永山の登りと同じように粗い砂走りとなっている。降るにはいいが、登るのは大変なので富士宮口から宝永第二火口までの往復をしようと思ったらそれなりの覚悟が必要だ。脚力に不安がある人は、富士宮口から御殿場口五合目へ降る計画を薦めたい。もちろん、登山としての充実感が得られるのは、逆に登る計画となる。

第二火口の下まで来ると木が生えているのだが、みな斜めに傾いでいる。この日は特に強い風が吹いていたわけではない。ここは常に強風が吹き抜けるためにこのようになったのだろう。この辺りは、もし強い風が吹いても滑落するような危険なルートではないが、富士山という山の自然の厳しさを垣間見せてくれる一場面であった。
その木々の脇を抜けると御殿庭(ごてんにわ)上へと続くトラバース(斜面の横断)ぎみの下りが続く。右手には御殿庭。宗教心のない私でもなんとなく神聖なものを感じさせる、まさに神の住まう御殿の庭といった趣がある。いや、決して神々しいとか、そういう大層な景色ではないのだが、なんとなく犯しがたい雰囲気がそこにはある。

15:38御殿庭上着

御殿庭上の分岐へ到着。ここで全ての飲み物が無くなった。須走口から登り始めたのが前日の12時半ごろであるから、約27時間で2.5リットルを消費したことになる。これは雨など、ずっと気温の低い中の登山であったからで、晴れた日に同じルートを辿ったらこれでは足りないであろうことは申し添えておきたい。

若い森

ここから先は、森の中を抜ける道となる。少ないながらも多少は登山経験がある私でも、見慣れない感じを受ける森であった。宝永山は、1707年の宝永大噴火によって生み出された極めて新しい山である。そのときに流れ出た溶岩や火山灰がそれまでの植生を総て焼き払った上に、長い年月を経てやっと出来たばかりの若い森が目の前にある。

地面は短い草に覆われ、痩せた細い木が間隔をあけて立っている。霧が深かったこともあって、幻想的な光景が広がっている。倒れている木が多いのは、溶岩の上の痩せた土壌は、大きく育った木を支えるほどの厚さがないからだろう。強い風などによって容易に倒れてしまうのかも知れない。しかし、この倒木がまた土に還り、新たな木の苗床となることが何百年、何千年と繰り返されて徐々に森は育まれていくのだ。
森もまた成長し、少しずつ大きくなるものなのだと、自然の営みの奥深さと悠久の時の長さにしばし思いを馳せる。昨日登って来た須走の森、後日登った吉田ルート馬返から上の森とも全然違う。富士山はまた違った顔を私に見せてくれた。

16:29幕岩上 着

御殿庭入口を抜け、幕岩上まで来ると急に視界が開ける。ここから先は、初心者にはちと難しい。いや、登山経験者でも、整備された登山道しか歩いたことの無い人なら戸惑うことだろう。何しろ、登山道を示すガイドロープも柵や木の杭も無く、ザレた砂利の地面は足跡も残りにくいため、歩くべき道が判然としないのだ。
特にこの日のように霧があるとルートを見失う恐れがあるので、慎重に足跡を探しながら道を辿るように気をつけて欲しい。何しろ写真のような景色が長く続くのである。鬱蒼とした森のように道が見つからないのではなく、どの方向へも歩いていける。このような広い場所もまた道迷いの危険があることを認識して欲しい。
比較的平坦なため御殿場口新5合目からここまではハイキングレベルだが、案内標識もまばらで一度霧に巻かれると方向を見失いやすい。初心者の方は、くれぐれも午後遅い時間に登らないように。地図も持たないような観光客は論外である。

そして、このルートの御殿場口側のハイライト、双子山に登る・・・が、霧で何も見えない。山頂は石碑のようなものがあるだけでだだっ広く、殺伐としている。降り口の標識も何もないために、適当に降りたら道を見失ってしまった。手元の地図では逆Vの字型に登り口とは別に降り口が書いてあるが、後日他の地図で確認したところ、登り口をそのまま降りるべきだったようだ。富士山にコンパスはいらないと書きながら、実はちゃっかりコンパスを持っていたので方角を確かめると、東に下りてしまっていたようだ。北に登山道があるはずなので北へ向かうとなんとか復帰出来た。道迷いに気をつけようと言ってるそばから自分が遭難したのでは話にならない。横着せずに、ルートを着実に踏むことが大切だ。

17:33大石茶屋着

双子山から大石茶屋までは、本当の砂走りを歩く。細かい砂で傾斜もそこそこあり、試しに登り返してみたが宝永山の登りほどには滑らない。御殿場ルートの本番もこんな感じであれば、言われているほど厳しくないのかもしれない。来年は御殿場ルートで登頂するぞ。
大石茶屋では、日曜日の遅い時間なので降って来る人がちらほらと通るだけだ。少し肌寒いのだが、カキ氷を注文。

17:51御殿場口5合目着16℃

御殿場口新五合目へとたどり着く。駐車場は上の第一駐車場で2~3割ぐらいの入り。第二、第三は、ガラガラ。登山道ならまだしも、ここから車道を延々と歩くのかと思うと気が滅入るが、しょうがない。5合目のトイレは無料で使えるが、洗浄水を循環させているとかで薬剤の臭いが酷い。気分が悪くなるほどなので、あまりここでの使用はオススメしない。

5合目を発ち、車道を歩いているところで暗くなって来たのでヘッドライト装着。1時間弱歩いていたところ、先に追い抜いていった車が停まっている。運転手さんが「御殿場駅まで歩くの?」と聞いてきたので、須走まで歩くむねを答えると、途中まで乗せていってくれるという。本当にありがたい。恐らく3時間ぐらいの短縮になったことだろう。乗せてくださった方の素性もお聞きしたが、タクシー代わりに思われるとご迷惑になるだろうからあえて明かさない。この場を借りてお礼を申し上げます。ありがとうございました。

登山をやっていると、結構こういう人情に触れることがある。私は単独登山だが、すれ違って挨拶するだけでも何かしらの共感を覚えることもある。富士山など行程の長い山では、見知らぬ登山者とずっと追いつ追われつの関係になることもあり、大抵は登頂後に山頂で気さくに会話が出来る。これもまた登山の醍醐味のひとつであると思う。みなさんもただ山頂に立つことだけでなく、登山そのものを楽しんでいただきたい。

帰宅

残りの道も歩き通し、ふじあざみライン仮設駐車場にやっと帰り着く。くたくたになって翌日深夜に帰宅。

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